天国と地獄
 

2025年8月6日更新

第262回  ブータンの幸せもお金次第!?

引き続き、ブータンの話をします。
さかのぼってお話ししますと、ブータンのパロ国際空港へは
ネパールのカトマンズから1時間くらいの飛行です。
ジェット機で1万mくらいまで上がるので、
晴れていれば行きは左手に帰りは右手にエベレストが見えます。
もちろん、ヒマラヤ山脈もです。

離陸して20~25分程経つと、左側の席にみんなが集まり、
遠くのヒマラヤを見て写真やビデオを撮っていました。
たまたま1番前の2席のうち1席が空いていたので、移動して私も少し映像を撮りました。

凄まじい光景ですね。8000m級の山々が連なり、
その下に6000m級の山々が連なっているのが雲の間から見える、すばらしい景色でした。

パロ国際空港は、山の谷間にある、とんでもないところでした。
私はこれまで数多くジェット旅客機に乗りましたけれども、
今回のように右手の窓側に座っていて着陸寸前に羽根が岩山にこするかと思ったのは、はじめてでした。
岩山まで、100mないほどです。
ジェット旅客機は、羽根が岩にもう少しで激突する位のところを急旋回して入って行きます。
そして、着陸寸前にパッと戻してポンと降りるのです。
こんな経験ははじめてです。

飛行機から降りてまず感じたのは、ネパールのカトマンズとは異なり空気がよいことです。
全く大気汚染がありません。
田舎の小さな空港で、空港を出てメインの道に入っても、家が1件もありません。
そこから車で15分走ると、町のメイン通りに出ます。
ただ、そこもせいぜいお店が100軒程度ある位です。
そこを通過し、空港から25分行ったところに素晴らしいホテルがありました。
皇族の眞子様も泊まったというホテルです。

新しいホテルですが、ブータンの古い建物の様式を取り入れていました。
部屋も装飾してあり、天井が高くて木で出来ていました。
そして、うれしかったのが水です。
それまではインドやネパールのひどい水でしたが、
ここでは山から出てきた新鮮なフレッシュウォーターでバスタブをためることができました。
ゆっくりくつろいだ翌日は、前回のコラムに書いたブータン訪問の目的であるタクツァン僧院を訪れました。

ブータンの人は、時間感覚がないのでしょうか。のんびりしています。
そして、旅行会社の下請けガイドもとても人柄がよかったです。
私は足が強くないのでゆっくり登り、お目当てのタクツァン僧院をじっくり見て、降りてきました。

時計を見ながら下に着くのが17時位かなと思っていたところ、
ガイドが「降りたらランチにしましょう」と言うのです。
下についてからホテルのある首都まで2時間くらいの移動があるのに、です。
結局、タクツァン僧院の下の駐車場を出たのが17時15分。
そしてホテルのレストランで食事をしたのが20時位でした。
ランチではなく、とっくにディナーです。
時間感覚がないのか、のんびりしています。

私がブータンに行きたかった目的の一つは、
かつてブータンは、「世界で1番、国民が幸せな国」と言われていましたが、
それが本当かどうかを確かめたかったのです。
ブータンは人口79万人しかいない国で、首都のティンプーが2、30万人、残りは山の中に住んでいます。
話を聞いてみると、学校も病院も、料金はタダです。
どうやって稼いでいるのかと言えば、一番の収入源は水力発電です。
電力をインドに売っています。2番目は観光で、3番目は農業・その他です。

その収入源として見過ごすことができないのが、〝冬虫夏草〟です。
中国の漢方によく出てくるもので、虫に寄生して生えてくるキノコです。
非常に体に良く、元気にすると言われています。
今回、ガイドの友人が採ったという乾燥した本物の冬虫夏草を分けてもらいました。
つくしみたいに細長い形です。
一見、グロテスクな冬虫夏草

私は、今回の旅でずっとカレーを食べていました。
そしてブータン料理は、世界一辛い料理と言われています。
唐辛子と野菜の煮込みのようなものを食べていたため、少しお腹の調子が良くありませんでした。
それで困っていたところ、頂いた冬虫夏草を飲むとびっくりするほどお腹の調子が良くなり、
それまでの疲れも取れました。
かなり効くということで、持っていた黒豆茶を飲む度に
多めの熱いお茶にそのまま冬虫夏草を入れて、一緒に飲みました。
そして、残った冬虫夏草は噛んで食べました。
味はほとんどありませんが、かなり体に良い効果が得られたので追加で購入するつもりです。

ブータン料理は世界一辛いという。
ブータンの伝統料理の店で出てきた、
小麦を炒ったおかず

 


ブータンでは、ほとんどの人は山に住んでいて、以前は貧しかったそうです。
ただガイドの話では、先ほどの冬虫夏草により「最近の山の連中は非常に金持ちだ」と言います。
冬虫夏草をたくさん採ってきて、非常に高く売れると言うことで、日本にも輸出しています。
なんと、ベトナム人や中国人は冬虫夏草だけを目当てにブータンに来るとのことです。
大量に買って行き、自分たちで飲んだり売ったりしているそうです。

本当に「世界で1番、国民が幸せな国」かどうかは、4泊という短期間ではよくわかりませんでした。
これまで訪問してきたインドやネパールには、カースト制度があります。
非常に厳しい身分制度です。

日本でいうと、江戸時代の士農工商です。
町民と武士では全く身分が異なり、武士の中でも特に高知県の土佐藩では、
上士と郷士とでも身分の違いがありました。
郷士は、上士が通るときは膝まずいで土下座をしなければいけません。
もし、すれ違った時に何もしなければ、
上士は郷士を叩き切ってもいいくらい身分差別が厳しかったわけです。

その身分制度が、明治維新で全て崩れました。
私が思う明治維新の最大の功績は、人々が平等になったことです。
今の日本では、頑張れば誰でも東大に行くことができ、どんな職業に就くことも自由です。
誰でものし上がる機会がある、そういう意味で日本は平等です。

それに対してインド、ネパールには、強力なカースト制度があります。
現在、日本に住む私たちからすると、想像できない世界です。
ブータンではそのような身分制度はほとんどなく、せいぜい国王がいるくらいで、
日本で言えば天皇の下に平等になった明治時代のような感じです。

ブータンの人はとても温厚ですが、すごく頑固でもあります。
言っても聞きません。
ブータンの人は、自分たちは幸せだと思い込んでいる可能性もあります。

もう一つ、ブータンの特徴は松茸が世界一取れるようです。
日本では北朝鮮や中国産が多く、国産品は驚くほど高価です。
10年くらい前に草津温泉に行った時のことです。
帰りの県道わきで松茸を安く売っていたので買いました。
父が松茸好きなので買って帰って家で食べましたが、後で地元の人に聞いたら、
あれはインチキで全て北朝鮮や中国産だと言うのです。まんまと騙されました。
本物は、東京の料亭にでも行かなければないそうです。
国産では丹波の松茸が有名ですが、ブータンの松茸はそれよりも質が良いみたいです。
本当かどうか疑問は残りますが、日本にも輸出しているらしいです。
他にも、山の国なので山の幸、わらび等がホテルの食事にも出ていました。

あとは、曼荼羅(まんだら)ですね。
インドでもブータンでも購入を勧められました。
ブータンでは、とても良い曼荼羅を安く買えました。
ブータン国王にも会ったことがある、40歳くらいの名人が描いた曼荼羅です。

ブータンは曼荼羅も有名


他には占いをやってもらいました。
ブータンには、占いの大学があるほどで、そこで見てもらいました。
驚いたことに、基本的な事は全部当たっており、とても愉快でした。
ただ1つ違和感を覚えたのは、全てを仏教に結びつけようとすることです。
たとえば、「あなたは私の言う千手住観音(せんじゅかんのん)の絵を買って
同時にお寺に寄付すれば良いことがある」と、占いの最中に言うわけです。
全て仏教につなげ、さらにお金を出させようとする。
やはり、“地獄の沙汰も金次第”なのでしょうか。
                         <次号に続く>