天国と地獄
 

2025年4月28日更新

第257回  運命の神秘<最終回>


占いの他にも、中国古来の文化に「鍼灸」があります。
実は今、この鍼灸が世界的に普及し始めています。
鍼灸とは全く無縁そうなアフリカでも普及し始めており、
鍼やお灸を使って治療することが増えてきているそうです。
鍼は特別な技術が必要ですが、お灸はそうでもありません。
しかもお灸は安価でできますから、それも普及に一役買っているそうです。
私は鍼のあとにお灸をするのが好きでして、なんとも言えない快感に包まれます。

そう考えると、いわゆる「ツボ」の存在も摩訶不思議ですね。
「足三里」というツボは胃腸とつながっているとされ、
そこをマッサージすることで腸、ひいては脳に良いというのです。
松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の間は足三里に毎日お灸を据えていたという記述が残されていますが、
まさに健康の神髄をわかっていたのではないでしょうか。

現代の西洋医学でも最近、「脳腸相関」という脳と腸の関係性が注目されています。
緊張や過度なストレスで、おなかが荒れたり、便秘になる。
逆に腸の不調が精神的なストレスに結びつく。
多くの人が経験したことのあるこれらの症状が「脳腸相関」です。
昔は脳と腸は全く関係ない(要はそれぞれ独立している)と考えられてきましたが、
近年では臓器は全部つながっているということがわかってきました。
お互いにいろいろな信号を送り、相互に依存しています。

漢方(中医学)では、昔から「ツボ」の存在が重要視されてきました。
たとえば、足裏マッサージもそうです。
これは広く知られていますが、足裏や手のひらには「反射区」という
内臓や器官と繋がっているとされる部位があり、
そこをマッサージすることでそれぞれの内臓や器官に良いとされています。
もちろん、これには科学的・医学的エビデンス(根拠)はありません。
しかし、世界中でこの「反射区」は支持されています。
まさに東洋医学の神秘といったところでしょうか。

中国の伝統には、当然、迷信の類も多くあります。
しかし私は、私が経験してきた中で効果的と思う中国の伝統
(具体的には統計学や中医など)は日々の生活に取り入れています。
たとえば、私が日頃から丹念に続けている「温熱」も中医学に根差しています。

ここまでは、リスペクトすべき中国の伝統について触れました。
こうした半面、中国には“恐ろしい伝統(歴史)”もあります。
中華5千年と言われる歴史のなかで、
いわゆる「易姓革命」(王朝が変わること)が幾度となく起こってきたことです。
そしてそれはどれもすさまじい殺戮を伴っているのです。

たとえば、中国では古くから大陸の中原(真ん中)にいた漢民族のところに、
北方から騎馬民族が攻め入りました。
それを阻止するために万里の長城が作られたとされていますが、
しかしその万里の長城も万能ではなく、皆殺しに遭うことがしばしばあったのです。
革命の際は、とりわけ皇帝など一族郎党が抹殺され、
殺されなくとも男連中は奴隷として連れて行かれます。
要は、国を丸ごと乗っ取るということが往々にして起こってきました。
元も、清もそうです。
中国の歴史は、本当にすさまじいものです。
中国に「悠久の歴史」があるのは事実でしょうが、
一方で私たち日本人からすると想像もつかないような「殺戮の歴史」でもあるのです。

そんな中国では、ずばり“戦略”がないと生きて行けません。
日本とは対照的です。
日本の歴史もそれは悠久と呼ぶにふさわしいものですが、
その長い歴史の中で殺戮を伴った「易姓革命」のようなものは、
ほとんど起きてきませんでした。
多少の内乱はありましたが、外国から異民族が入ってきて
国ごとなくなるということはさすがに起こっていません。

強いて言えば、鎌倉時代の「元寇」くらいのものです。
それも北九州のほんの一部をかすったくらいで、
神風(台風)によって運よく助かりました。
ただし対馬や壱岐(福岡のすぐ北)の惨状は、それはそれは酷いものだったと言います。
私も対馬を実際に訪れて、元寇の歴史を現地の人や古戦場から学びましたが、
それはまさに目を覆いたくなるほどのものでした。要は、皆殺しです。

元、すなわち北方の騎馬民族はものすごく野蛮で獰猛です。
チンギスハンは、中国・中央アジア・イラン・東ヨーロッパなどを次々に征服し、
最終的には当時の世界人口の半数以上を
統治するにいたる人類史上最大規模のモンゴル帝国を築きました。
チンギスハンは制圧の際、抵抗すればそこにいる人たち全員を殺したほど残酷でした。
チンギスハンは当時のイスラム勢力を極端に衰えさせ、
そこにあった文明を消失させたほどです。
「屠る(ほふる)」という言葉がありますが、
この「屠る」というのは城ごとすべて殺してしまうという意味です。

私がかねてからお伝えしてきた「文明の800年周期」では、
800年ごとの文明の交代期には決まって大動乱が起こっています。
そして、今こそがその時期に当たるのです。
世界を見渡すと、移民という名の民族大移動がすでに始まっています。
戦争も増えてきました。
これからの数十年は、戦争・動乱・疫病・民族大移動、食糧危機が日常化し、
最悪の場合は文明の消失という究極の事態に直面するでしょう。
今がその恐ろしい時期にあたるということを多くの人は信じませんが、
私は強く警鐘を鳴らしたいと思います。

「文明の800年周期説」において「覇権の移行期」に当たる今、
世界は混とんとした様相を見せている。
これは歴史の必然なのであるが、
日本に住む私たちもその影響を受けないわけには行かない。
これからは誰もが“人生初“というような体験をすることになるので、
まさかの時のための備えをしっかりしていただきたい。
(2025年3月 高知・坂本龍馬記念館にて)