皆さんこんにちは!浅井隆です。
今、2024年12月ですが、12月とは思えない気温の日々が続いています。
これが年内最後のコラムになりますので、来年を予測してみたいと思います。
一言でいうと、2025年は「大混迷の時代」でしょう。
国内を見ると、経済はまずまず安定していますが、何より政治が不安定化しそうです。
先に第二次石破内閣が発足しましたが、
あくまで少数与党ですので内政の停滞は必至ではないでしょうか。
私は石破さんと2冊の本を出版し、数年にわたってお付き合いをしてきました。
非常に優しく、素敵で、行動力のある人だと思っています。
しかし、果たして首相としての器があるのかに関しては、疑問符が付きます。
首相になって以降、テレビに映るその表情は、萎縮や周囲への気遣いに染まっているように思います。
率直に言って、「俺は殺されても、何がなんでもやってやる!」という表情ではありません。
石破さんは、私と同じく財政規律を重視する立場ですが、政権基盤が弱い以上、
意志を政治に反映させるのは難しいでしょう。
はっきり言ってしまうと、自民党も含めてその政策は「パンとサーカス」状態です。
減税など耳障りのいい話ばかりで、負担の覚悟を国民に問うている政党は見当たりません。
もちろん、経済成長によって債務残高の対GDP(国内総生産)比を減らせるのであれば、文句はありません。
しかし過去30年もの間、財政出動してもほぼゼロ%成長に終始してきました。
減税が一時の成長に資することは間違いないでしょうが、
果たして恒常的な生産性アップに寄与するかは、はなはだ疑問です。
「バラマキで成長」という、昭和からのお家芸に固執しているとしか私には思えません。
ところで、私は最近、IMF(国際通貨基金)の前幹部と親しくなりました。
IMFはワシントンDCに本部があり、世界中の財政をモニター(監視)しており、
対外収支の不均衡や財政危機の際には一定の役割を果たしています。
その一方で、過酷な緊縮財政や預金引き出し制限、
年金カットを突き付けることから「泣く子も黙るIMF」などと揶揄されることもしばしばです。
たとえば1997年の韓国通貨危機は、「IMF危機」とも呼ばれています。
このとき、韓国の通貨ウォンは非常に不安定化しました。
この様子は、韓国映画「国家が破産する日」で詳しく描かれていますので、
年末年始に鑑賞するのもよいでしょう(日本でもDVDが販売されています)。
通貨危機の際、韓国はIMFからお金を借りた(融資を受けた)わけですが、
そのためにIMFの言いなりにされました。
韓国から見たら言いなり状態ですが、IMFから見たらあくまでも“指導”です。
IMFは韓国だけでなく、インドネシアやタイにも介入しました。
それから30年近くが経ちましたが、この3ヵ国ではIMFをいまだに恨んでいる人がいると言われています。
IMFと支援された国の関係を簡単に表現すると、次のようなものになります。
Aさんは借金をしすぎて、首が回らなくなりました。
そして先輩のBさんに泣きつきます。Bさんはある条件と引き換えにお金を融通します。
そのBさんの条件とは、「今までの贅沢を全部やめろ」というものでした。
それまでのAさんは、サラ金や銀行からお金を借りて高級車のベンツを乗り回し、
ひどい時はフェラーリまで乗り、そして毎日シャンパンを飲んでいました。
どう考えてもこの贅沢をやめないと借金は返せません。
そこで Bさんは毎日のようにAさん家へ行き、厳しく指導しました。シャンパンを飲んでいたら、
「今後は安い焼酎にしろ。フェラーリやベンツは売って現金化しろ。電車通勤でよい。
嫁さんへのプレゼントもやめ、外食も禁止、家では安いスーパーの特売品を食べろ」と。
贅沢に慣れきっていたAさんは「冗談じゃない」と憤慨しますが、
鬼の形相のBさんの言ったことを守り、5年後に借金を返済しました。
このIMFは、日本の財政にも厳しい目を向けています。IMFの人は私にこう話しました。
「世界に196ヵ国中、債務のきちんとした統計(たとえばGDP比で何%といったもの)がある国は178ヵ国。
というのも、内戦で混乱している国やベネズエラのような破綻国家は正確な統計を作れない。
あるいは、統計を表に出したくないということもある。
半面、日本やアメリカも含めた先進国は、さすがに信用できる統計がある。
その178ヵ国の中で日本の借金の規模が何位かというと、178ヵ国中178位。最低だ」。
歴史上、戦費以外の理由(日本の場合は主に社会保障費)で
対GDP比200%以上の債務を抱えたのは、ここ日本が初めてです。
すでに日本の財政はとんでもない状況ですが、ハングパーラメント(議院内閣制の政治体制において、
立法府でどの政党も議席の単独過半数を獲得していない、今の日本のような状態)
によって財政赤字はさらに加速するでしょう。
私は、日本の財政破綻、国家破産が近付いたと見ています。
私がこのコラムで繰り返しお伝えしていた「40年周期」で言うと、
日本は2025年がどん底にあたります。そう、「来年」です。
800年周期の観点からしても、21世紀は大混乱の時代、そして「覇権」が移り変わる時期に当たります。
過去800年は、ヨーロッパ(西洋)の時代でした。
最初に覇権を握ったのはイタリア・ルネッサンスのベネチア。
ベネチアには都市国家があり、今のイスラム地域からヨーロッパでは
なかなか手に入らない胡椒などをインドから輸入し、その中継地点という立場で富を築きました。
ベネチアの他にもフィレンツェやジェノバが台頭し、ヨーロッパの中枢の位置に座りました。
そこから「銀行」というシステムもできています。
しかしイタリアの覇権はやがて、スペイン、オランダ、大英帝国、そしてアメリカに移って行きます。
現在のアメリカは、覇権を失う少し手前の位置にあります。
オバマ元大統領は「アメリカはもう、世界の警察官ではない」と宣言し、
トランプ次期大統領も「アメリカファースト」という立場ですし、米国民の多くもそれに同調しています。
食糧もエネルギーも自給できるアメリカは、自国優先主義で最後の輝きを発揮する可能性がありますが、
アメリカ以外の国では大混乱になるでしょう。
まさに、中国の「戦国七雄」のような群雄割拠の時代に入りつつあります。 |