天国と地獄
 

2024年11月20日更新

第249回  私が環境問題に力を入れる理由<下>

皆さん、こんにちは。浅井隆です。
今回は前々回の続きで、なぜ私が環境問題に関心を持ち、力を入れているのかをお話しします。

私は毎日新聞を辞めて経済ジャーナリストとして活動しながら、
数多くの本を出版し、すでに30年近く経ちます。
その間、環境問題に注目してきましたが、最近では特にプラスチックの問題が
人類にとって大きな脅威になっていると感じています。
驚くべきことに、すでに私たちの脳の約0.5%はプラスチックになっていると言われています。

たとえば、コンビニでは多くのペットボトル飲料が販売されていますが、
その一部が廃棄され、川や海へ流れ込みます。
また、化粧品にも微小なプラスチックが含まれており、
洗顔後の水が下水を通って川や海へと流れ出し、
それをプランクトンが食べ、次に小魚や大きな魚がそのプランクトンを食べます。
最終的には、私たち人間がその魚を食べることになります。
さらに、水道水にもすでにプラスチックが含まれていますし、
ペットボトルの劣化によってもプラスチックが発生しています。

これらの小さなプラスチックの破片は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、
さらに小さく目に見えないものは「ナノプラスチック」といいます。
プラスチック自体が有害物質を含んでいるだけでなく、
他の化学物質、特に有害物質を吸収してしまうのです。
これらがどんどん体内に侵入しています。

プラスチック問題は地球規模で広がっており、
太平洋上にはプラスチックを中心としたごみの層が形成されています。
さらに、都市部から遠く離れた工場さえもない遠隔地、
たとえばグリーンランドでも深刻な影響が見られます。
現地の先住民たちは魚や鯨を主食としていますが、
これらの動物に多くの化学物質が含まれており、
その結果として、多くの人々が重い病気にかかっているのです。

このような問題は、私たちにも影響を及ぼしています。
先日、プラスチックを専門に研究している東京農工大学の高田教授から話を聞いたところ、
世界中にプラスチックが散らばり、海から空まであらゆる場所に存在しているとのことでした。
もはや、回収する手段がないという深刻な状況だそうです。
プラスチック以外にも、さまざまな化学物質が存在しています。
人類は、ここ100年余りで2億種以上の化学物質を作り出し、
そのうち主要な数万種が使用されています。
それらが地球全体に広がり、私たちの体にも取り込まれているのです。

特に、農薬問題が深刻です。
以前使用されていた有機塩素系農薬は、その有害性が指摘されて使用が減り、
代わりにネオニコチノイド系の農薬が導入されました。
しかし、これは昆虫の神経と脳を攻撃するもので、
昆虫だけでなく人間にも影響を及ぼしています。
この農薬が使われるようになってから、子供たちの精神状態が不安定になったり、
乱暴な行動が増えるなどの問題が発生しています。
また、蜂が大量に消えたり、田んぼからカエルが姿を消したりしています。
これらの現象も農薬の影響によるものです。
海洋汚染研究を行なっている
東京農工大学の高田秀重教授は、
世界中に散らばる
マイクロプラスチックに警鐘を鳴らす

群馬県前橋市にある青山医院の青山先生は、
このような問題に取り組む専門医で、全国から患者が訪れています。
農薬が撒かれた直後に頭痛や吐き気、手の震えなどの症状を訴える人が多数いるとのことです。
日本ではEUに比べて5倍から6倍の農薬が使われており、その影響は非常に大きいです。
田舎の自然が美しいと感じられる一方で、実際には農薬が大量に撒かれており、
都会以上に危険な環境が広がっているといわれています。

さらに、最近問題となっている有機フッ素化合物「ピーファス(PFAS)」は、
WHOもガンの原因として警告しており、日本の水道水にも多く含まれています。
環境省も調査を開始しており、これらの汚染物質が増加することで、
日本人にガンやアレルギーなどの病気が増えていると考えられます。
これらの化学物質は複合汚染を引き起こし、単一の物質だけでなく、
複数の物質が相乗的に人間や生物に悪影響を及ぼしています。

このままでは、人類は絶滅こそしないものの、
人口が大幅に減少するなどの大変な時代を迎えるかもしれません。
気候変動や森林伐採の問題と併せて、地球環境を守る必要があります。
そこで私は、この地球を美しいまま次の世代にバトンタッチするための
プロジェクトを今、考えています。
そのうち、その中身をお話しできる時が来たら発表しますので、楽しみにしていて下さい。
 
なんと、東京農工大の自動販売機には
ペットボトルが使われた飲料は1本もなかった。
小さなことをコツコツと積み重ねて、
少しでもプラスチックの使用量を減らしたいものである。
      (2024年9月 東京農工大学にて)