天国と地獄
 

2024年7月5日更新

第241回  日銀介入!

ゴールデンウィーク中にとんでもないことが起きました。
為替がなんと一瞬1ドル=160円を付け、その後日本政府側が為替介入したために
151円台まで動くという、すさまじい展開になりました。
私も1ドル=160円は必ず来るなと思っていたのですが、
こんなに早く来るとは想像していませんでした。
しかも、その付近で2回も介入したらしいのです。

それでもこれを執筆している7月3日現在で1ドル=161円台と、
かなり円安が進んでいます。
今回の円安圧力はものすごいなと感じます。
残念ながら現在の日本は国力、つまり国の体力が
非常に落ちてきていると言ってよいと思います。

日本円は3、4年前までは1ドル=100円位でした。
それが2022年秋には、一挙に1ドル=151円になりましたが、
日銀の為替介入によって、1ドル=140円台位に戻りました。
その後もジワジワと円安が進み、
今回は151円を抜いて一気に1ドル=160円に到達したというわけです。

今回、1ドル=160円の円安になりましたが、これは序の口です。
おそらく5年以内に1ドル=200円を突破して、
その後、1ドル=300円までは到達するとみています。
さらに進んで、もし戦後の固定相場時代の1ドル=360円も超えてしまえばチャート上は天井が無く、
1ドル=1000円にも2000円にもなりうるということになるでしょう。

今回、なぜ1ドル=160円になっただけでこれだけ介入したのでしょうか。
今から約40年前、日本が経済的に一番強くなったころ、「プラザ合意」(1985年)がありました。
日本の輸出力はすさまじく、自動車を中心にアメリカ産業をたたき潰しました。
アメリカではGMやフォードの社員たちが
日本の車をハンマーで壊している様子がテレビに映し出されていました。
アメリカ政府も、日本の経済が強すぎて「もう限界」という状態で、
1985年にニューヨークのプラザホテルと言う大きなホテルで
世界の主要国首脳を呼んで会議をしました。

日本からは、当時の竹下大蔵大臣が行ったのですが、
アメリカは各国に外国為替市場への協調介入を要請しました。
簡単に言えば「円高にしろ」という、まぁ一種の命令ですね。
日本は、円高になれば輸出がしづらくなる。
そうなると日本の力が削がれるだろうということで、アメリカは円高にしようとしたのです。

プラザ合意のころ、ドル/円は1ドル=230円から240円位だったと思いますが、
この合意の後に一気に1ドル=160円まで円高になりました。
その時のチャートをみると、「窓」が開いています。
空間のように“飛んでいる”部分があるのです。
こういう価格帯は、逆に円安が進行するときにも同じように窓が開く可能性が高いのです。
つまり、同じように窓が開いて円安にストーンと一気に行ってしまうというわけです。
まさに今は、1ドル=160円から230円の円安になろうという瀬戸際なのです。

こうなると、さすがに日本の政府、特に財務省も黙ってはいられません。
国内は急速なインフレになりますし、
物価上昇に賃金が追い付かなければ国民の怒りが爆発してしまいます。
そうした思惑から、1ドル=160円で介入したと言ってよいと思います。

さて、このコラムをご覧の方は相当経済の知識がある方だと思うのですが、
今回、私がみなさんに申し上げたいのは、
世の中を見極めるためにはその一番重要なポイント、
あるいは本質を掴む必要があるということです。
今回、なぜこんなに円安になっているのか。
なぜ今後、もっと円安になって行くと予測できるのか。
これらには、実は重要な2つの問題が関係しています。

1つには、日本政府の借金があまりにも大きすぎるということです。
日本の政府債務はGDP比で250%程度に上りますが、これは世界第2位の莫大な規模です。
1位はレバノンですが、そのレバノンは第二次世界大戦以降、
最もひどい経済状況といわれている国です。
その次が日本ということですが、こんなに借金を抱える先進国など他にありません。

2つ目はアベノミクスにより、たくさん国債を発行し借金を増やしていく過程で、
その日本国債の半分以上を日銀が買ったということです。
中央銀行が500数十兆買ったわけですが、これと対になるのが「日銀当座預金」の550兆円です。
とんでもない額の当座預金ですね。
会計で言えば、国債は日銀の資産に当たり、当座預金はその代金になります。

しかしこれは、日銀のお金ではありません。
日銀の当座預金に入っていますが、民間銀行のお金です
(民間銀行が買った国債を日銀が買い上げ、その代金が入っている)。
ですから、国債は日銀の資産、当座預金は負債になるのです。
そして今後、金利が上がった場合は、当座預金にも金利をつけなければなりません。
インフレになり金利上がったとき、
銀行は国民、つまり預金者に対して利息を払わなければいけません。
それと同じで、日銀が利息を付けないと銀行が潰れてしまいます。

というわけで、必ず利息を付けなければならないのですが、
日銀当座に1%利息を付けると、日銀には550兆円の1%、
すなわち5.5兆円の負担が発生することになります。
一方で、日銀の資産、自己資本というのは10兆円から12兆円くらいしかありません。
もし年1%の利息を払えば、2年で債務超過に陥るわけです。
これがもし、金利を2%付利しなければならなくなったら、1年で債務超過です。

世界最大規模の借金がある国の中央銀行が債務超過になったら、これはもう大変です。
信用のない国とみなされ、世界中から円が売られ、日本国債も売られます。
そうなると、日銀も日本政府も破産するわけです。

日本としては、円安を放置したくないが円安を止めるためには金利を上げなければいけない。
しかし、金利を上げたら日本銀行、日本政府が破綻してしまうという、
死んでも言えない事情があるのです。
財務官と日銀総裁も当然わかっているのですが、死んでも言えないわけですね。

これは、別に国家の最高機密というわけではありません。
わかっている人はわかっている話ですが、政治家や官僚たちはこれを死んでも言えませんし、
マスコミでもあまり取り上げられません。
したがって、ほとんどの一般の国民はそんなことを知りませんし、興味も持っていません。
だいたい、日銀に当座預金があることすら知りませんからね。

「金利を上げないがために円安を食い止められない日本国政府は頭がおかしい」と、
海外からは本当にひどいことを言われています。
つまり、本当は金利を上げれば円安を止められるのに、それをしていないと。
しかしそれは、実際にはしないのではなく、できないのです。
なぜなら、前述のように金利を上げれば国債の価格は下落し、
さらに莫大な国債の利払いが増えるためです。

結局、他に方法がないので、財務省は円安を止めようと今回は9兆円位の莫大なお金、
外貨準備高を使って介入して円安を止めようとしたわけです。
これは、ありえない矛盾です。

ところで、皆さまは矛盾の語源は知っていますか。
矛盾はホコ(矛)とタテ(盾)と書きます。
むかし中国の戦国時代(2000年以上前)、中国にはたくさんの国があり、
ある国のある町でホコとタテを売っている商人がいました。
その商人は買いに来たお客に、ホコを見せて「このホコはどんなタテをも貫ける」と言い、
今度はタテを見せて「このタテはどんなホコで突いても守ることができる」と言いました。
そうしたらお客が「あなたのホコでタテを突いたらどうなるのか」と言いました。
商人は何も言い返せず押し黙ったと言います。
これが起源となって、二つの事柄のつじつまが合わないことを
「ホコ」と「タテ」を書いて矛盾というようになりました。

今の日本政府は、莫大な借金を日銀に買わせていることで
つじつまが合わなくなった「金利」と「為替」という2つの問題を、
無理やりお金(為替介入)でどうにかしようとしているというわけです。
どんなことでも、結局は矛盾が解消しない限りコトは収まりません。
となると、やはり円安は止まらないですね。
一時的に介入で円高に振れても、それはあくまで気休めにすぎません。

そういえば先日、日経新聞が不思議なことを書いていました。
今回の介入によって政府・日銀が儲かったというのです。
介入原資である米ドルは、ドル安だった時期に買ったもので
それをドル高になったこの時期に売ったため、儲かったと言っているのです。

確かにこれで儲かりはしましたが、
「一兆円儲かった! やった!」などという問題ではありません。
だいたい、日本国政府の借金は1000兆円を超えているわけですし、
日銀が抱える当座預金は550兆円程です。
まったくもって問題の核心ではないわけです。それを「少し儲かった」と記事に取り上げるのは、
国民の目を逸らせ騙すようなことになりかねないことで、
ハッキリ言って日経新聞が何を考えて記事にしたのか、私は非常に大きな疑念を持っています。

これほど重大な問題が横たわっているのに、
経済の専門紙ですらこんな記事を書く状態(他のマスコミなどもっとひどい体たらくですが)ですので、
この国は相当まずい状況になってきています。
以前から言っている通り、私はこの国は究極的には預金封鎖まで行くと思っています。
そして、財産税も取りに行くでしょう。国民が保有する金(ゴールド)も没収されます。

もちろん、このまま何もなければ緩やかな形で
危機がゆっくり進行する可能性もあるかもしれませんが、
南海トラフ地震や首都直下型地震などの大天災が起きたり、
台湾有事や朝鮮半島有事が起きたりすれば、一発で破綻します。
その時、みなさんの大切な老後の資金を保つためには、二つしかありません。
一つは「ドルの紙幣、現物を自宅に持つこと」、
そしてもう一つは「ダイヤモンドの現物を持つこと」です。

ドルは交換所に行けば買えますが、ダイヤモンドはなかなか安く買えません。
ただ、実はデパートなどで売っているダイヤモンドの3分の1くらいの価格、
それこそニューヨークのユダヤ人の取引価格に近い価格帯で買うことも可能です。
もし、興味があるという方は、第二海援隊の「ダイヤモンド投資情報センター」
(03-3291-6106 担当 齋藤:または当社ホームページ「お問い合わせ」からも可)まで
ご連絡いただきたいと思います。

日銀は金利を上げることもできず、
にっちもさっちも行かないことは
政府・日銀関係者はもちろん、
少し経済の知識がある人々はすでにわかっている。
皆、見て見ぬふりをしているが、
いよいよダメになる瞬間、
彼らはどう対処するつもりなのだろうか。
(2024年6月 北海道 札幌にて     
    写真は北海道特産のキンキの煮付け)