天国と地獄
 

2024年6月3日更新

第240回 日経平均株価の史上最高値に思うこと

皆さんこんにちは、浅井隆です。
今年は年始からびっくりするような出来事がいくつもありました。

まず、236回でも書きましたように、元旦に能登で起きた大地震と津波で
いまだに家に帰れず避難している方がいるという、大変な被害が発生しました。
そして翌日は、羽田空港で海保の飛行機とJAL機が激突するという大事故です。

打って変わって経済では、2月に日経平均株価が史上最高値を更新しました。
それ以前の最高値はバブルの時(1989年の12月29日)でしたが、
若い人は覚えてないでしょうね。
「大納会」という、株取引が行われる一年で最後の日に付けた
38,915円がこれまでの最高値でした。
今回はその最高値を一気に抜き、日経平均株価は41,000円近くまで上昇しました。

ただ、果たしてこの日本株の上昇を、我々は単純に喜んでよいのでしょうか。
企業の実力以上に株価が盛り上がっていたバブル時とは異なり、
現在の企業は利益をたくさん出している地に足の着いた株価の上昇で、
昨今の米国株のように株でしっかり資産形成できる良い時代になった
と思う人もいるかもしれません。
しかし、私はそんなに甘くないと考えています。

結論から申し上げると、この株高は「国家破産の前兆」と言ってよいと私は思っています。
今回の株高は、企業の業績が予想以上に良い事と、
円安により輸出企業が特に潤っているためです。
この円安がもっと進み、1ドル=200円位になってくると
今度はインフレが深刻な問題となってくると思うのですが、
160円位であれば心地よい状況というわけです。
そしてもう一つ、欧米各国が中国から工場を撤退させ、その上投資も撤退し、
その資金が中国→日本へと流れ込んできているのです。
これらが重なって株高になったこと、それが表面上の理由です。

しかし、問題はこの本質です。
人間は物事の表面だけを見ていてはダメで、底流にある本質、
基本的な原因が何かということに気づかなければいけないのです。
それで言うと、現在の株高の本質は、
私たちが使っている“円という通貨の劣化”です。
つまり、将来待ち受ける国家破産の前兆として円の価値が著しく低下し、
それによって物価や株価が上昇しているのです。
これが本質的な理由であると、私たちは肝に銘じなければなりません。

これには、歴史上に重大な前例があります。
今から約100年前の1923年のドイツです。
当時、ドイツはとんでもない状況で、それまでの1年半でなんと物価が1兆%も上昇していました。
つまり、物の値段が100億倍になったのです。
1年半で100円のパンが1兆円になるという、とんでもないことが起きたのです。

その原因は、第一次大戦で敗戦国となったドイツを二度と立ち上がれないようにするために、
連合国の中で特にフランスがドイツに対してベルサイユ条約により莫大な戦争賠償金を課したことです。
これによって、ドイツが完全に破綻に陥ったのです。

実はドイツでは、そのようなとんでもないハイパーインフレの前に、
2回の株高と心地よいインフレがありました。
1回目は第一次世界大戦中のことで、戦争遂行のために多額の国債を発行して資金調達し、
その国債を中央銀行(ドイツはライヒスバンク)に引き受けさせました。
その結果、インフレが起きドイツマルク安になったのですが、
輸出が増えて軽度のインフレにより株が上がり、
ドイツ国民は景気が良くなったと勘違いしたのです。
2回目は戦後、戦争賠償金を払うために国債を大量発行し、
中央銀行がこれを引き受けた時で、この時も当初は軽いインフレ、株高になり、
ドイツ国民の体感は良くなりました。

しかし、それは長続きしなかったのです。
その後にとんでもないハイパーインフレと国家破産が来て、
ドイツは歴史上最大規模の大混乱を経験します。
そして、そのわずか6年後の1929年にはアメリカ発の世界恐慌が起きて、
今度はドイツはすさまじいデフレに陥ったのです。
ドイツ人は、ハイパーインフレからデフレという全く逆の現象によって
多くの人が全財産を失い、不満が溜まって頭が完全におかしくなってしまいました。

それを、ヒトラーがうまく糾合したのです。
ナチス政党は選挙によって政権を勝ち取り、人々を扇動その他で
自分たちの好きなように動かす独裁専制を布いて第二次大戦に突入、
そして、とんでもない悲劇が起きるわけです。
その根本的な原因は、先ほど述べたベルサイユ条約による戦争賠償金で、
その賠償金のためにドイツ政府が大量に発行した国債を、中央銀行が引き受けたことにあります。

あれ? と皆さんは思ったことでしょう。
そう、今の日本に状況が酷似しているのです。
日本の場合は戦争賠償金ではなく、社会保障費です。
少子高齢化で老人ばかり増えてしまい、
年金、介護、医療の費用が莫大になってきています。
それを賄うために借金、つまり国債を発行しています。

ドイツの前例から、世界の中央銀行あるいは政府は、
中央銀行による国債の直接引き受けが禁じ手であることを学びました。
政府(日本の財務省)が発行した国債を、
直接中央銀行(日本の場合は日銀)が買い取ってはいけないのです。

では、日本の実態はどうかというと、
財務省が発行した国債をまず民間の銀行が買い取ります。
そして、それをすぐに日銀が買います。
だから「直接引き受けてはいない」けれども「ほとんど直接引き受けに近い形」で、
一種の“ごまかし”です。これを、ずっと続けています。

コロナ後の量的緩和や世界規模のインフレもあり、日本株は上がりました。
株を持っている人は、さぞかし喜んでいるでしょうが、
私は、この後に来る出来事が恐ろしいと思います。

ここで、日本がどのくらい借金をしているかをお話しするというと、
「世界の政府総債務残高対GDP比」で世界196ヵ国中、
現在第2位(ワースト)です(2022年時点IMF発表)。
この間まで日本は1位で、不名誉なことに常に日本は1・2位を争う位置にいます。
ちなみに現在の1位は、第二次大戦後最悪の経済状況と言われ、
国がボロボロになっているレバノンです。
さらに言うと、ベネズエラという食べ物もないどうしようもなくなった国よりも、
日本の借金はひどい状態です。

ですから、日本は最終的にみなさんの個人金融資産、
銀行預金と相殺するしか手がありません。
これから、国民の財産と相殺という恐ろしい運命が待っています。
この前兆が、今回の株高です。
皆さんには今回の株高をこのように捉えていただきたいのです。

私が数年前から言っているように、将来への備えには金(ゴールド)だけではなく、
ダイヤモンドを持ってください。
冒頭の能登半島地震のように、昨今の日本では天災がとても増えてきています。
前回のコラムでは、隕石衝突による60メートルの津波を予言している人の話を書きましたが、
その時に持って逃げられるのは、金(ゴールド)ではなくダイヤモンドです。

そして、すでに金(ゴールド)は1万2000円程度までほぼ一直線で上昇し過熱感がありますが、
ダイヤモンドの価格はまだ出遅れている状態です。
ですから、ぜひこの機会に「ダイヤモンドを全財産の10%持つ」という
生き残りの鉄則を実践して頂きたいです。
ご興味のある方は、「ダイヤモンド投資情報センター」(デパートの3分の1の値段で購入できる)
がありますのでお問い合わせください。

ダイヤモンドについてのお問い合わせ
「第二海援隊 ダイヤモンド投資情報センター」TEL:03-3291-6106 担当:齋藤

「嵐の前の静けさ」あるいは
「禍福はあざなえる縄のごとし」というように、
大きな禍の前は不思議と落ち着いていたり
良いことが起こることが、歴史を見てもよくある。
第二次世界大戦前のドイツの様子を反面教師として、
今の日本の株高とそれによる上場企業の好調さ、
そこから来るふわっとした好況感に甘んじることなく、
国家破産対策を進めていただきたい。
 (2024年5月 山口県萩市 高杉晋作の生家前にて)