天国と地獄
 

2022年12月19日更新

第211回 海外から見た日本<その2>

前回からの続きで、最後にニュージーランドの話をしましょう。
2022年8月からニュージーランドは、
ワクチン証明すら必要とせず入国できるようになりました。
現地で隔離されることもありません。
今から1年半ほど前は、ワクチン接種の有無に関わらず
入国した全員が2週間の隔離を強いられました
(逃げ出せば軍隊に捕まり、刑務所に入れられるというほど厳しい措置であったといいます)。

世界的にコロナは、もうエンデミック化
(集団免疫の強さと感染の広がりが一定のつり合いに達すること)しつつあります。
今でもお亡くなりになる方がいるので軽々しいことは言えませんが、
いよいよ共存を模索する時期に差し掛かってきています。

2023年11月には、数年ぶりにNZツアーを開催します。
今回は、その事前調査も兼ねての訪問でした。
以前にツアーで利用したレストランが潰れていないかなど、
現地の気になることは山ほどありました。

今回はニュージーランド航空のビジネスクラスを利用しました。
そのため成田空港では(ニュージーランド航空と一緒の)
スターアライアンス加盟の全日空(ANA)の
ビジネスクラスのラウンジを利用したのですが、
最も離発着の多い夕方だったということもあり、人がいっぱいでした。
そのほとんどは外国人です。
トランジット(乗り継ぎ)の人もいたかもしれませんが、
やはり以前に比べて人が増えたと感じました。
それでも免税店の多くは閉まっています。
早く、以前の活気を取り戻してほしいなと思います。

ニュージーランド航空のサービスは非常に良く、
今までで一番でした(私は何百回もニュージーランド航空に乗っています)。
飛行機のサービスには、どうしてもムラができます。
JALでもANAでもSQ(シンガポール航空)でもそうですが、
毎回クルーが違うので、そのクルーによって
100点の時もあれば40点の時もあると私は思います。

成田からニュージーランドのオークランドまでは
10時間30分ほどのフライトですが、
ここでもアメリカと同じように、ほとんどの白人が
機内でマスクを外していたことに驚きました。
CAに聞くと、機内はニュージーランド国内の扱いとなるので、
マスクは着けなくてよいそうなのです。
マスクをしているのは日本人だけ、という状況でした。

今も、日本人の多くは道を歩くときにもマスクを外しません。
すっかりマスク着用の文化が根付いてしまったようです。
室内はともかく、私は外を歩く際はマスクの着用は必要ないと思います。
極端に人通りが多い場所は例外ですが、
そうではない状況でマスクを着ける必要はないでしょう。
外でもマスクするのは、
医学的な観点からしても体に良くないことなのではないでしょうか。

日本人は政治家や官僚も含めて、あまり積極的にリスクを取ろうとしません。
今回のコロナ対応もそうですね。
基本的に、世界から“周回遅れ”だなと私は感じていました。
多くの国がコロナとの共存を覚悟し、
早い段階で国境を開放させたにも関わらず、
日本はずっと“鎖国”していました。
日本が国境に関する規制を大幅に緩和したのは、この10月のことです。

コロナを軽視しろ、というわけでは決してありません。
日本の“鎖国政策”も、多くの国民から支持されました。
しかし私は、日本社会はもっとリスクを取るべきだと感じていました。
感染症とは、どこかで折り合いをつける必要があるのです。
そうした点も、政治家や官僚として手腕の見せ所だと思うのですが、
日本人はリスクを取りたがりません。
今回のコロナ対応で、そのことが私にはとても残念に思えました。

本質的に、日本人には“慎重さ”が備わっていると思います。
それは良いところでもあるのですが、一方で変化に対して鈍感です。
素早く切り替えることができません。
今や、世界は真に激動の時代を迎えています。
こうした時代に、どこかのんびりとした日本人が生き残っていけるのかと不安になります。

コロナ対策の“固執”という点では、お隣の中国も異常ですね。
「ゼロコロナ」などと強弁を張っていますが、
私には習近平の意図がよくわかりません。
もしかすると、軍事訓練の一種かもしれませんので警戒が必要です。

さて、ニュージーランドに到着した初日は快晴で、
本当に素晴らしい海の景色を眺めることができました。
ただし、ニュージーランドの天気はころころ変わります。翌日は暴風雨でした。
ニュージーランドはまだ春が始まったばかりで、
ちょうど私が到着した日からサマータイムとなり、
時差は4時間になりました(前日までは3時間です)。
4時間の時差は、ぎりぎり時差ボケしないレベルですかね。

桜もちらほらと見ることができました。
日本で3~4月に桜を見て、
今度は9月にニュージーランドで桜を見るというのは、
なんとも不思議な感じです。
ニュージーランドには、桜の木があちらこちらにあります。

ニュージーランドの現地の人々は、
「何しろ、物価が高くなった」と口々に言っていました。
たとえば車にガソリンを入れる時、会計が怖くて満タンにできず、
半分くらいでやめてしまうというケースも増えたそうです。
それくらい、物価が上がったのですね。

また、治安もかなり悪くなりました。
コロナ禍とインフレで食べられなくなった人が増え(貧富の差が激しくなり)、
オークランドのクイーンストリート(メインストリート)では、
ホームレスが前より明らかに増えた印象を持ちます。
最近は、コソ泥や車上荒らしが非常に多くなっているそうです。

ニュージーランドに限らず、コロナ禍やウクライナ戦争、
インフレによって、世界は以前よりも安全な場所ではなくなりつつあります。
それでも日本やニュージーランドは、まだマシではないでしょうか。
しかし、地政学的な観点では日本は最も危険な場所に位置していると言えます。
なにせ中国、ロシア、北朝鮮に周囲を囲まれているのですから。

もし核戦争が起きても、生き残るのはここニュージーランドだけ、
と世界の富裕層は考えています。
インフレとはいえ、食料自給率は300%もあるので餓死することはありません。
反面、日本の食料自給率は極端に低いのです。
やはり、ニュージーランドが世界一安全な国であることは間違いありません。

来年(2023年)の11月にニュージーランドツアーを開催しますので、
是非、ご参加頂ければと思います。
この国を、一度ご自分の目で見ていただきたいと思います。

日本という国自体の考え方や国民性、そして取り巻く環境などを考えると、
本当に安全・安心な国と言えなくなってきている。
自分の国、大切な人の命は、自分たちで守るしかなくなってきている。
世界が“安全な国”と評するニュージーランドを、
是非一度、見に行っていただきたい。
(2022年9月 ニュージーランド・オークランド郊外にて)