天国と地獄
 

2022年4月20日更新

第196回 食の思い出 <世界に冠たる和食>

さて、今回は和食の話をしようと思います。
和食のなかでも寿司や鰻などは、
嫌いな人がいないというほど日本人から愛されていますね。
鰻は外国人には浸透していませんが、寿司店は世界中ありとあらゆる場所にあります。

私は鰻が大好物ですが、日本に鰻の名店はそこまで多くないなという印象を持っています。
私の舌がわがままだと言ったらそれまでかもしれませんが、
なかなか見つけることはできません。
麻布の有名店「N」なども、もちろん味は悪くないと思うのですが、
そこまで絶品かな? という印象です。
熊本に一軒、ちょっと甘い味付けでしたが美味しい鰻屋がありました。
また、早稲田の近くにすごく美味しい鰻屋さんがあると聞いたことがありますので、
コロナ禍があけたらトライしてみようと思います。
もし、おいしい鰻屋さんがありましたらぜひご紹介ください。

良いお寿司屋さんを見つけることも、難しいと感じています。
あえて実名は出しませんが、映画にもなり、安倍元首相が
米国のオバマ元大統領を接待したことでも知られる超有名店がありますよね。
正直に言いますと、私はあそこが嫌いです。
なぜかというと、どうしてもあの高慢な態度が好きになれません。
“職人気質”と言ってしまえばそれまでかもしれませんし、
賛否両論あるのは知っていますが、
私の印象では一見(いちげん)さんにはろくに相手をせず、
常連さんにばかりいい顔する。
味はとても美味しかったので、残念でなりません。

料理を出すお店(とりわけお寿司屋さん)は、味だけで評価できません。
お店の雰囲気、接客、会話のどれもが重要だと思っています。
その一つでも欠けていたら、私は好きにはなりません。
その点、小田急線の下北沢にある「小笹寿し」は良いお店だと思っています。
毎日新聞社の頃か、私が独立してすぐの頃によく通っていたお店です。
銀座に弟子がやっている支店もあるのですが、本店の方が安くて通いやすいです。

そこにも名物おやじがいまして、とても怖い(苦笑)
平気でお客さんを怒鳴りつけます。
ビールのおかわりを頼むと怒鳴られるのです。
「なんで、寿司でビールなんか飲んでんだ!
 一杯はいいけど、あとは日本酒だろ!」と(苦笑)
それでも寿司が美味しかったのと、リーズナブルだったので通っていました。

味だけでなく、見た目も美しいお寿司

たまたまある時、「おやじさんは戦争に行かれたのですか?」と聞きました。
「おう、俺、陸軍で苦労したんだよ」と言います。
すると、うちの父親と同じ歳ということがわかり、
「うちの父は、海軍でした」と言うと、
そこから親父さんの態度がガラりと変わりました(苦笑)
「そうか、あんたの親父さんも苦労したのか、海軍さんかい」と言って、
気を良くしてくれたのです。昔堅気の江戸っ子なのですかね。
最近は全く行っていないのですが、今はお弟子さんが握っていて、場所も変わったようです。
穴子の白焼きが美味しいので、ぜひ近くに行った際は寄ってみてください

日本でもお寿司屋さんの名店を見つけるのは難しいのに、
それが海外になるとハードルはさらに高くなります。
というより、絶望的です(苦笑)
たとえ日本人がやっているお店でも、良いところがほとんどありません。

5、6年前にロンドンで行ったお寿司屋さんは、ミシュランの2つ星を取得していました。
なかなか予約が取れないのですが、現地の友人がたまたま予約できたので
行ってみたのですが、絶句してしまいました。
何しろ、大トロしか出さないのです。
そこに、キャビアとかトリュフを載せています。
外国人にはラグジュアリー(高級)な感覚で受けるのかもしれませんが、
私からするともう気持ち悪くて。
横にいた日本人は、「親父さん、すごいね~」などと言っていましたが、
正気の沙汰とは思えません。
私は、寿司ネタではコハダや穴子、あとマグロ赤身などが好きですね。
高級感ばかり意識しているその店では、結局1人6、7万円くらいでした。
その後、その店のミシュランの星は、なくなってしまいました。

もともと寿司というのは、江戸時代の屋台でおにぎりのような感覚で売っていたものです。
大工さんとかが、午後3時くらいにお腹がすいたときに1個つまむ、
というような感じだったそうです。
シャリの大きさもおにぎりくらいあり、
そこに江戸前でとれた魚をポンと乗せたものをその場で食べるか、
走りながら食べていたそうです。まさに、庶民の食べ物でした。

日本には、いろいろなお寿司屋さんがあって面白いと思いますが、
基本は庶民の食べ物ですし、
あまりにも高慢な態度でお客さんを見下すようなお店には感心しません。
寿司は日本の文化ですから、
コロナ禍が明けたらまたどこか良いお寿司屋さんを探したいなと思っています。
こちらも、良い店がありましたらぜひご紹介ください。

私は寿司好きだが、緊張した店で一つのネタだけを食べたいとは思わない。
安価なネタも高級なネタも、楽しく気持ちよく食べたいものだ。
(2021年10月 福岡に行くと必ず行くお寿司屋さんの前で)