天国と地獄
 

2022年3月4日更新

第193回 食の思い出<健康食②>

前回からの続きで、「健康食」についての話題です。
飲み物の話も少ししましょう。
昔は、ホテルのラウンジなどでは一度淹れたコーヒーを
2時間も3時間も温めていました。
今でもたまにそういう店もありますが、あれは最悪です。
コーヒーというのは、淹れてすぐ飲めば体に良いですが、酸化させたら最悪です。
それは、単なる“コーヒーの煮込み”です。

またお茶、特に日本茶は非常に怖いものです。
葉っぱに直接お湯をかけて飲むわけですから、影響が少ないはずがありません。
特に、ペットボトルのお茶については、
強い農薬を使って栽培した茶葉で淹れたお茶が入っているものもあると言われています。
ですから私は、ペットボトルのお茶は一切飲みません。

今から50~60年くらい前のことだと思いますが、アメリカで異様な事件が起きました。
ある男性がどんどん太っていき、しかも女性の様に胸が大きくなり、
最後には異様な死に方をしたのです。
警察が調べたものの、原因がわかりません。
「普通の死に方ではない。毒殺だろう」ということで、
FBIも調査に乗り出しますが、青酸カリなどの毒物は出てきません。

いくら調べてもわからず、散々悩んだ末にある担当官が
「彼の食生活を調べてみよう」と言い出しました。
そして、原因が判明します。
なんと、それはチキンだったのです。
その男性は、世界的な有名チェーンが売っているようなフライドチキンばかりを、
毎日食べていたようなのです。
そのチキンを調べてみると、かなりの化学物質が含まれていたそうです。
特に、女性ホルモンが多く含まれていました。
ニワトリをなるべく早く大きく太らせるには、女性ホルモンが一番効果的なのです。
大量の女性ホルモンを、ブロイラー用のエサの中に入れていました。
大量の女性ホルモンを投与されたチキンを毎日食べていたため、
女性のように胸が膨らみ、どんどん太って、ついには死んでしまったのです。

このことを知ってから、私はスーパーで売っているような安いチキンや
工場などで大量生産されているようなチキンは絶対に食べません。
ブロイラーを育てる最先端の工場は、明かりがなく真っ暗です。
大量のニワトリが密集して詰め込まれており、
お互いが見えるとストレスでニワトリ同士が相手の目をつついて殺してしまうため、
真っ暗にしているのです。
もちろん、エサには大量の化学物質が含まれます。
そんな環境で育ったニワトリが体に良いはずがありません。
ニワトリも気の毒ですが、
人間にとってもこのようなものは、もはや食べ物とは言えないでしょう。

私の著書の中に『ミツバチが地上から消える日』(第二海援隊刊)という本がありますが、
十何年前からミツバチが世界中からどんどん姿を消し始めています。
それは、ある時期と符合します。
多くの農家が、使用する農薬を昆虫の神経と脳に作用する
新しいタイプのものに変えたのです。
もちろん、これが全ての原因ではないとは思いますが、
その直後からハチが消え始めました。これも、とても怖い話です。

私が大学生の頃、『沈黙の春』(英語名「silent spring」)という本に出会いました。
世界的なベストセラーで、
「虫も何もいなくなり、人間さえもいなくなる沈黙の春が来るのではないか」という内容の本です。
1960年代には、世界的に農薬や除草剤などが無秩序に使われていました。
戦後日本に来たGHQが、特に子供たちに「DDT」という殺虫剤を頭から振りかけ、
子供が頭から真っ白になっている映像が残っています。
あれは猛毒ですから、絶対にやってはいけないことです。
そのアメリカでも、鷲や鷹などがどんどんいなくなり、
鳥の奇形や、卵からふ化しなくなる例が相次ぎました。

もう一冊、ローマクラブが発表した『成長の限界』も衝撃的でした。
人間が資源を取り尽くし、汚染物質を排出することによって
動物も植物も生きられなくなり、このままでは将来、
地球が滅びかねないという内容の本です。
このような本の影響もあり、私は環境問題に非常に敏感になっていました。
そして、本コラムでもお話ししましたが、
大学2年の時に「宇宙船地球号を守る会」という会を友人と作り、
「地球環境を守ろう」という運動を始めたのです。
その頃の知識もあったせいか、
特に食べ物だけは安全なものを食べようという思いが強いのです。

私も、全て安全なものを食べているとは言えませんが、
食事には相当、気をつけています。
安い食品や安い飲食店で使われる食材には、何が入っているかわかりません。
防腐剤など大量の添加物が使われていることもあるでしょう。
特に体に悪いのは、揚げ物です。
安い揚げ物というのは、たいてい質の悪い油を使っています。
たとえば、コロッケなども揚げてすぐに食べればよいのですが、
時間がたてば酸化してしまいます。それが、最も体に悪いのです。
私は、買ってきた揚げ物は一切食べません。
家では、最も良質と思われる油を使うようお手伝いさんに厳命しています。

私は25~29歳まで大阪の毎日新聞にいましたが、
なるべく人がやらないような独自の取材を心掛けていました。
当時、淡路島にある「淡路島モンキーセンター」という施設を取材しました。
そこでは野生の日本猿の餌付けをしていましたが、
最もひどい時は、生まれてくる猿の約半数が右手首から下がなかったり、
指が何本かないなどの奇形だったそうです。
私はそこに何回も通い取材させてもらったので、
当時のそこの園長とは家族のように親しくなりました。
その彼が「本当のところはよくわからないが、
おそらく猿に食べさせているアメリカ産の飼料の中に含まれる
農薬や化学物質が原因ではないか」と言っていました。

驚いたのは、その彼が家の中ではゴキブリを殺すために殺虫剤を使っていたことです。
「自分が殺虫剤、撒いちゃダメでしょ」とつっこみたい気持ちでした。
農薬は少なからず口に入るものですが、
殺虫剤は口に入れるものではないので規制がゆるいわけです。
その毒性は、化学兵器並みと考えておく方がよいでしょう。
多くの人が、こういうことを知らずに殺虫剤を使っているのです。
我が家では殺虫剤は一切禁止です。蚊取り線香でさえかなりの毒です。
実際、結構のどなどに刺激を感じる人も多いことと思います。
虫というのは、ある面では人間より数十倍強い生き物です。
それを殺すのですから、余程のことです。

日本は先進国で最もがんが多いのですが、理由は明白です。
日本では諸外国に比べ、農薬に対する規制がゆるいためです。
これはひとえに「癒着」だと思います。
全体像はわかりませんが、おそらく、
農薬メーカーと農水省の役人との間に癒着があるのでしょう。
少なからぬ役人が自分たちの保身と利権、そして将来の天下り先のことしか考えていません。
国民のことなど、考えていないのです。
国民は、その犠牲になっている可能性があります。
私は自宅では、洗剤類ひとつとっても危険性の高いものは一切使わせません。
前述の蚊取り線香や殺虫剤も、私の家にはありません。
スイッチを入れると電流が流れる、ラケット型の“電撃殺虫器”で蚊を退治しています。
ゴキブリは、出たら新聞などで叩き潰せばよいのです。
ガンで死ぬことになるより、よほどいいです。

とにかく、「知らない」ということは本当に怖いことです。
皆さんもぜひ勉強して、食べ物にはくれぐれも気をつけてほしいと思います。
自分の体は自分で守るしかありません。
ガンで身体を切り刻まれたくなければ、自分で良い情報を集めて生き残るしかないと思います。

食べたものによって私たちの身体は作られている。
農薬や添加物を使用していないものをなるべく食べるようにして頂きたい。
         (2021年6月 東京・千代田区にて)