天国と地獄
 

2023年11月2日更新

第231回「成功の秘訣」――耐える力①

今回のコラムは、「成功の秘訣」というテーマでお話ししてみたいと思います。
私は現在68歳で、今年の12月には69歳になります。
私は「人間が成功するにはどのような要素が重要なのか」
という問いについて、ずっと考えてきました。

究極的に言えば、人間は孤立して生きることのできない生き物です。
私たち人間は、狼のように群れをなして行動する存在なのです。
したがって他の人々との関係、つまり人間関係が成功の鍵だと私は考えています。
今日、AIやロボットの技術がめざましい進化を遂げていますが、
それでもやはり、人間同士の関係は極めて重要です。

しかし、そこには一つ大きな問題が存在します。
それは、個々の人間は自分の主義主張や欲望を追求し「他人と衝突」することがあるということです。
誰にとっても他人は自分とは異なる存在であり、その違いから摩擦が生じるのは当然のことです。
このような状況で非常に重要になるのが、
自己犠牲を承知で我慢する「耐える力」だと私は考えています。

最近、つくづく思うのが子供のしつけについてです。
電車に乗っていると時折、小さな子どもを連れた親を見かけます。
3歳くらいの子どもが座席に靴を履いたまま座っていることもあります。
泥だらけの靴が他の乗客にぶつかっても、ほとんどの親は何も言いません。

もし私がその子の親だったら、
「ちゃんとマナーを守りなさい」とその場で厳しく指導します。
あまりにも目に余ると、そのような親に対して
「子どもにしつけをしなさい!」と言うこともあります。
言われた親は驚き、露骨に嫌な顔をされたり喧嘩になることもありますが、
子どもの教育は非常に重要だと私は信じています。

最近は、学校でもしつけられていない子どもたちが騒いで授業にならないというケースも多いようです。
中には、学校に対して子どものしつけをするよう要求する親もいるといいます。
少なからぬ家庭で、最低限のしつけさえ行なわれていないのです。
「ダメなことはダメ」という原則と、「耐えるべきは耐える」という忍耐力を身に付けることが、
人間関係において非常に重要だと私は思います。

たとえば、職場では同僚、上司、部下などとの関係があり、
男女関係では恋人、夫婦、パートナーといった関係があります。
統計データを見たわけではありませんが、日本人同士の夫婦と白人同士の夫婦を比較すると
老後に関係が悪くなる夫婦は日本人同士の方が圧倒的に多いと感じます。

また、離婚こそしていないものの、家庭内でほぼ離婚状態になっている夫婦もいます。
お互いに会話もせず、家に帰っても食事をとり、寝るだけの生活です。
昔から「亭主元気で留守がいい」などと言われますが、
もはや夫などいない方が幸福という女性も少なくないのでしょう。

定年退職時に妻から離婚を求められ、財産の半分を持って行かれる男性もいます。
こうなると、たいていの男性はもう生きていけません。
特に家事を妻に任せきりにしてきた男性は、
ほとんど生活能力がありませんから“孤独死”の危険性が高まります。

対照的に、女性は強く離婚や死別に直面しても友達と楽しい時間を過ごし生き抜く力があります。
実は、生理的にも女性は男性より強いと言われています。
男性がちょっとした出血でも致命傷になるケースがあるのに対し、
女性はある程度の出血があっても生き延びる確率が高いのです。

皮肉なもので、人間、親密になればなるほど相手と些細なことで上手くいかなくなる面があります。
男女関係は、特にそうかもしれません。
たとえば朝食について、妻はパン派で夫はごはん派といった場合、もめることも少なくないでしょう。
また、エアコンの設定温度についても意見が対立しがちです。

本当かどうかはわかりませんが、次のような話を聞いたことがあります。
ある男性がとても美しい女性と結婚しました。
新婚旅行から帰国した初日の夜、夕食を楽しみにしていると、
食卓に出されたのはコンビニ弁当でした。その日は新婚旅行から帰ってきたばかりで
疲れもあるだろうから仕方がない、と男性は思いました。
しかし、翌日もその翌日も食卓に並ぶのはコンビニ弁当のみ。
買ってきたコンビニ弁当をレンジでチンして食べるだけです。
一週間、コンビニ弁当が続いたところで男性が「何か作ってくれないか?」と言うと、
「料理は作ったことがないし、出来ない」と言われたといいます。
結局、その夫婦は3ヵ月後に離婚したそうです。

また、相性も重要です。
相性が良いと何をしても好意的に感じられるものですが、
相性が悪いと相手のいかなる言動にも嫌悪感を持ってしまうものです。
友達なら相性が悪ければ付き合わないこともできますが、
夫婦間ではなかなかそうは行きません(最近は簡単に離婚を選択する人も多いようですが……)。

夫婦や恋人においては、愛情をきちんと示すことがとても大切です。
日本人男性の多くができていないようですが、多少無理をしてでも
相手の事が好き、大切なら「愛している」と口に出して伝えなければいけないのです。

人生というのは、“演劇”のようなものだと私は思います。
一人で生まれ、一人で死んでいく演劇です。
生きている間、私たちは誰かと関わり続けなければなりません。
相手を思いやり、うまく関係を築くためには演技が必要なのです。
通勤電車で隣に座る人でさえ“一期一会”です。
上手く付き合っていかなければならないのです。

 

成功するために必要なことはいくつもあると思われるが、
人として世の中に迷惑とならないだけのマナーを身に付け、
人間関係をうまく構築して行くことは、もっとも基本的なことで大切なことである。
     (2023年8月 浅草駅スペーシアX号の前で)