皆さん、こんにちは。
私は去る1月28日から3月5日までニュージーランド(以下NZ)に滞在していたのですが、
今回の滞在では何とも悲惨な目に遭いました。
私は毎日新聞社で報道カメラマンを14年間務めたこともあり、
大災害などの厳しい現場の取材を数多くこなしてきたと自負しています。
しかし今回、その私が絶句するほど大変な目に遭ったのです。
日本ではほとんど報道されなかったようですが
(トルコで大地震があったからかもしれません)、
NZ北島のオークランドでは今年に入り
2度も大型サイクロン(日本の台風)による甚大な被害が発生しています。
私は、その2度目の大型サイクロンを現地で経験しました。
NZは南半球にあるので、日本が冬の間、NZは夏になります。
本来、この季節のNZは穏やかな天候で過ごしやすいのですが、
知人によると、昨年11月位からほとんど晴れ間がなかったといいます。
その知人は「20年間NZに住んでいて、こんなことは初めてだ」と、
とても参っている様子でした。
近年は温暖化の影響から気候変動が盛んに叫ばれていますが(実際そうなのでしょう)、
今回のNZの異常気象には昨年の“トンガ大噴火”の影響が
大いに関与していると現地では伝えられていました。
ちなみに米フォーブス誌(2/1付)は、
米航空宇宙局(NASA)の専門家の分析として、
2022年1月中旬にトンガ沖で発生した大規模な火山噴火は、
爆薬の一種トリニトロトルエン(TNT)換算で
最大18メガトンに相当する驚異的なパワーを放ったとし、
第二次世界大戦末期に長崎と広島に投下された原爆の
何倍もの規模であったと指摘、世界的な気候変動を通じて
「今後も地球に大混乱を引き起こす可能性が高い」と警告しています。
さて、私は今回1月28日(土)の成田発NZ航空でオークランドまで行き、
そこから南島のクイーンズタウンに行く予定でした。
しかし、その直前に発生したサイクロンによる洪水の影響で
オークランド空港が浸水してしまい、乗る予定の便が欠航になってしまいました。
出発日の朝にその状況を知った私は、
ANAの羽田発シドニー行きの便に空席があったのを発見し、
急遽その便で向かうことにしました。
ちなみにシドニーからはNZ航空でクライストチャーチに行くことができます。
ただ、事前にスーツケースを成田空港に送ってしまっていたので、
一度成田空港まで行って成田でスーツケースを拾ってから
タクシーで羽田空港に向かいました。
翌日、シドニーには無事につきましたが、私には一つ心配事がありました。
シドニーからクライストチャーチまでの航空券がなぜか羽田空港で発券できず、
現地(シドニー)で発券してほしいと言われていたのです。
ところがその旨をラウンジの受付の女性に話すと、
親切にも彼女は受付の仕事が終えてからわざわざ私のためにNZ航空の搭乗口に行き、
チケットをもらってきてくれたのです。
出発からずっとイレギュラー続きで疲れていた私にとって、
この優しさはまさに最高の癒しでした。
シドニーからクライストチャーチは、およそ3時間半のフライトです。
深夜12時ごろにクライストチャーチに到着したので、
その日は空港近くのホテルに泊まり、
翌日は出発までの時間を利用して市内を視察しました。
クライストチャーチでは、以前大きな地震が2回ありましたので、
その後の復興について気になっていたのです。
そしてその日の午後、ようやく目的地であるクイーンズタウンまで
国内線で飛ぶことができました。
南島のクイーンズタウンは、幸い平穏でした。
その頃にはようやくオークランド空港も国内線が再開しており、
クイーンズタウンに3泊したあとNZ最大の都市オークランド
(ちなみにNZの首都は第2の都市、ウェリントンです)に入りました。
実は、ここからが大変だったのです……。
オークランドではいつも知人の別荘を借り、
現地の知り合いの日本人に食事や身の回りの世話をお願いしているのですが、
私がオークランドに着いて数日後から
その人たちが次々とコロナに感染してしまったのです……。
最終的には“誰もいない”という状態となりました(苦笑)。
恥ずかしながら私は、身の回りのことを世話してくれる人がいないと生きていけません。
とても心細い状況でした。
しかも、そうした状況で「ガブリエル」という
凄まじい勢力の巨大サイクロンがやって来たのです。
「大天使ガブリエル」(ミカエル、ラファエルと共に
聖書に出てくる三大天使の一人)から名をとっていますが、
もはやその猛威は「悪魔」レベルでした。
風速30mを超える暴風雨が吹き荒れました。
お借りしている別荘は海辺にある物件なのですが、
冗談抜きに「家が吹き飛ぶ!」と思うくらいの暴風雨で、
私は2晩、熟睡できませんでした。
なにせ2日間、朝から晩までずっと猛烈な嵐が続いたのです。
停電にもなってしまいました。
ニュージーランドはインフラが脆弱で、
サイクロンの時などはすぐに停電になってしまいます。
「ガブリエル」の到来はあらかじめ知っていましたので、
必要な物を買い揃えるために近くのスーパーまで行ったのですが、
こういうときは皆が一斉に同じ行動を起こしますので壮絶な競争になります。
ロウソク、懐中電灯、電池、そして火も使えなくなるだろうと
ガスコンロを手に入れたかったのですが、
コンロで使うガスボンベが売り切れでした。
私は普段の生活がいかにありがたいものなのか、実感しました。
そしてまた、このたびのことで地球規模の気候変動が
いかに激しくなっているかを感じたのです。
私は「3.11東日本大震災」のとき、招かれた講演会に登壇するため
福島県のいわき市にいました。原発のすぐそばです。
そこであの大地震に巻き込まれたのです。
私は毎日新聞社で報道カメラマンをしていたとき、
奥尻島(北海道)の大津波をヘリコプターで取材しています。
また、福島第一原発も上空から取材したことがありました。
ですから、福島の原発の場所も把握していました。
この二つの経験から、いわき市で震度6強の地震に遭遇したとき、
「これは津波と原発の被害が出る!!」と瞬時にわかりました。
しかも私は、地震が発生したとき海岸の近くにいました。
というのも、講演会の主催者である政策投資銀行の支店長が私の大学時代の後輩で、
その彼が講演会の前に車で観光に連れて行ってくれていたのです。
私は大急ぎで車に乗り、海から少しでも離れようとしました。
しかし避難している最中、周囲にまったく他の車がいないにも関わらず
運転手さんは律儀に信号で止まります。
私は「非常事態なのだから、車がいなければ信号を無視してとにかく逃げよう!!」
と言いました。それでも次の信号でまた止まってしまうのです。
非常事態と認識していないのでしょうが、日本人は本当に生真面目だと思いました(苦笑)。
途中、二階建ての観光バスが止まっていることに気が付いたのですが、
そのバスは避難しようとしていませんでした。
津波など来ないと思って被害状況が分かるまであえて停車する、
という安全策を講じてしまったのでしょう。
結果的にこのバスの安全策は誤りであり、
乗客ごと流されて全員亡くなってしまったといいます。
「危機管理」は、瞬時の判断が必要になります。
ラジオなども聞きながら、なるべく早く行動しなくてはなりません。
日本は災害大国ですが、今回NZでサイクロンに見舞われたことからもわかるように、
100%安全な土地などありません。
最近起きたトルコの大地震を見ても、そのことはわかります。
どこにおいても大地震や津波はいつやって来るか分かりません。
東京の場合は首都直下型地震、あるいは富士山の大噴火など起きようものなら
まず大停電に見舞われるでしょう。
やはり、自宅にはソーラーパネルと自家用発電機、
蓄電池などが必須ではないでしょうか。
私は食糧の備蓄をすでに徹底していますが、停電対策は未完です。
今度、徹底しようと強く思いました。
これを読まれている皆さんも、今一度「危機管理」を徹底してください。
以上、ニュージーランドで災害に遭った浅井からの災害警告のための緊急コラムでした。 |