天国と地獄
 

2021年6月15日更新

第168回  ニュージーランドの思い出
          <機内で出会った美しい人>

前回に続いて、ニュージーランドの話をしたいと思います。
私が初めてニュージーランドに行ったのは、1997年のゴールデンウイーク前頃だったと思います。
24年も前のことで、今のニュージーランドからは考えられませんが
当時は本当に何もない貧しい国でした。
現在は成田からオークランドへの直行便がありますが、
当時はクライストチャーチ経由がほとんどでした。
まだ、「ボーイング747」というジャンボジェット機が飛んでいた時代です。

ニュージーランドに向かう機内で思い出深いのは、
偶然、女優の吉永小百合さんと同じ飛行機に乗り合わせたことです。
当時のジャンボ機には、機首に近い1階の最前部に「ビジネスファースト」という
座席クラスがありました。シートはファーストクラスのものを使用し、
サービスや食事はビジネスクラスというものです。

私は毎年、日本の秋~冬(現地の春~夏)の時期にニュージーランドに出かけます。
夕方6時頃の出発が多く、外はもう完全に日が落ちて機内も暗いのです。
ビジネスファーストの座席は4席設けられ、私は一番右の席でした。
私の隣には、大柄で白人の中年男性がブスッとした表情で座っていました。
見ると、そのさらに左側の2席は空いています。
無愛想なおじさんの横に長時間いたくないと思った私は、
離陸して落ち着いたらCAに言って一番左の席に変えてもらおうと考えていました。

しばらくして、もう一度左側の席に目をやると、
いつの間にか小柄な日本人女性が座っています。吉永小百合さんでした。
シャープの液晶テレビのCM撮影のために渡航したようです。
大画面の液晶テレビが佇む大きな家から、
吉永さんがニュージーランドの広大な海を見渡すというCMが、一時期流れていました。

実は以前、私は一度彼女に会っているのです。
私が毎日新聞社でカメラマンをやっていた33歳くらいの時に、インタビューしたことがあります。
インタビュー自体は学芸部の記者が行ない、カメラマンの私は写真を撮影しました。
その日は泊りがけの24時間勤務明けでしたが、写真部のデスクから
「ちょっと悪いけど、日勤(10~18時勤務)のカメラマンを使ってしまうと
何か事件があった時に困るから、関君行ってくれ」と頼まれ取材に向かったのです。

インタビューは、帝国ホテルの一室で午前中に行われました。
髪を光らせるためにストロボを当てようと彼女の後ろに回り込むと、
吉永さんのうなじが視界に飛び込んできました。
狭い場所でスペースに余裕がなく、わずか60㎝程度の至近距離です。
あまりの美しさに、私はクラクラーっとしてしまいました。

当時、私が33歳ですから、彼女がまだ40歳を少し過ぎた頃だったと思います。
向こうが覚えているはずがないとは思いましたが、
「以前、お会いしました」と声を掛けてみると、
やはり全然相手にされなかったのを覚えています。
超有名人ですから、いろいろな人に声を掛けられるのでしょう。

ニュージーランドは自然が豊かであるためか、
国内、国外問わず多くの有名人が訪れている。
不動産を持っている有名人も少なくないようだ。
   (2020年2月 ニュージーランド・オークランドにて)