さて、もう一つの縁のある地、北海道についてもお話ししましょう。
北海道といえば、私はやはりあの雄大な自然が大好きです。
大自然を満喫するだけでも心地よいものですが、
私の場合、人との縁も不思議と多いのです。
まず、私の長男はいま海外在住で、たまに日本に帰って来る程度なのですが、
長男のお嫁さんと子供たちが札幌に住んでいるのです。
また、札幌には私の大ファンがいて、
札幌に行くと必ずお寿司屋さんに連れて行ってくれるのです。
そのお寿司屋さんがまた格別で、
東京以外であれほど立派な、美味しい寿司屋を私は見たことがありません。
北海道というのは不思議なところで、
「日本」という国として見てみると明治維新以降しか歴史がありません。
それ以前はアイヌの人々が住んでいたのでアイヌの歴史があるのですが、
江戸時代に松前藩(松前漬けでも有名ですね)がちょっとあっただけなのです。
あと、五稜郭という幕末に建造された幕府の城がありました。
その五稜郭は、榎本武揚ら旧幕府軍が立てこもって新政府に抵抗し、
新撰組副長の土方歳三が戦死した、戊辰戦争最後の戦場でもあります。
明治維新以降、北海道は本土から移民が入って開拓されていくのですが、
移民は寄せ集めの集団で、特に東北地方の人が多かったため、
ずうずう弁とまではいきませんが、東北訛りが強い言葉が定着したとされます。
同じ移民の地でも、オーストラリアなどはもともと流刑地だったため、
悪い言い方をすれば「囚人が作った国」という話なのですが、
北海道の場合はそれとは違います。
ただ、やはり中には本土で食い詰めた人が一発当てようとやって来たりもしているので、
アメリカのカウボーイなどにも似てちょっと性格が荒っぽいところがあるかもしれません。
たとえば、北海道の人たちの豪快な車の運転の仕方を見たりすると
「ここの人たちは、ちょっと違うな!」と感じることがあります。
一方、人間としてはあけっぴろげで、あまり嘘はつかない正直な印象があります。
あと、北海道も美味しいものがたくさんありますね。
魚介類などは本当に素晴らしいです。まだ海もあまり汚染もされていません。
ただ、田舎の方の水源などはだいぶ中国人に買われてしまったみたいで、
非常に残念だなという感じがします。
最近はコロナ禍でもあり、あまり行っていないのですが、
北海道に行く時、以前はよく中標津空港へ降り立っていました。
中標津空港は北海道でも最も東にある空港で、釧路の上の方、摩周湖の近くにあります。
また、以前もこのコラムでお話ししましたが(第114回)、
毎日新聞に勤めていた時、北方四島の写真を撮りに行ったことがあります。
このとき私は飛行機で行ったのですが、
それとは別に東京から撮影用のヘリコプターが何回か給油をしながら1日がかりで移動し、
釧路空港にヘリコプターを停めていたこともあります。
ずっと霧が晴れず、数日間足止めを食らう羽目になったのですが、
このとき航空部のパイロットや整備士たちと「今日も飛ばねぇな」などと言いながら、
夜の釧路で地元の人が来る炉端焼きのお店に入りました。
そこで食べた焼き魚と、炉端におにぎりを結んで30分かけてじっくり炭火で焼いた焼おにぎりが、
それまで食べた焼きおにぎりの中で一番美味しかったのです。
この時の印象は強烈で、いまだに忘れられない思い出です。
北海道は食べ物が美味しいし、
ちょっと荒っぽいですが、人情は素朴でいいなと思います。
東京はもちろん世界中の情報が集まり、ビジネスチャンスも多いため、
仕事をするにはやはり東京を離れられません。
私は、東京郊外に住んでいますが、本来はあまり居たいと思うところではありません。
人々の人間性が良くないのです。もちろん、全員が悪いわけではないのですが、
マンションに住んでいても隣の人が誰なのか知らず、挨拶もしないような場合が多いですよね。
その点、田舎というか地方の場合は、人間性が豊かだという感じがします。
ただ地方が残念なのは、少子高齢化で過疎化してしまい、廃屋が増えてしまっていることです。
また、北海道の地方などに行くと、土地などはもはや二束三文という有様です。
この間、北海道(の地方)に良い土地がないか調べてみたのですが、
3ヘクタールで1000万円、坪にして1000円とか500円とかなのです
(おそらく、雑木林で農地にするのも大変なようなところだとは思います)。
ひと昔前、「原野商法」というひどい商法が流行ったことがありますが、
いまやタダ同然になってしまっているところもたくさんあります。
必ずしも高い値段が付く必要はないのですが、
それでも土地の値段はその地域の「価値」を表す意味合いがあり、
価値が極めて低いというのはやはり考えものです。
私は、地方がこれから再生できればよいと思っています。
前々回から述べて来ましたように、私は北海道と九州が大好きです。
ただ最近残念に思うのは、九州が見舞われている大気汚染です。
主に、中国からの黄砂やPM2.5(微小粒子状物質)が原因なのですが、
特に春の福岡などはひどいですね。マスクをしないと子供たちを外に出せないくらいです。
九州全体で見ても、鹿児島は福岡ほどではないのですが、
それでもやはりモワ~っとしたものが飛んできており、健康面での注意が必要です。
九州の大気汚染は中国からかなり影響を受けているわけですが、
その点、北海道はそのような影響はほとんどありません。
そういう意味では、北海道が日本の中では一番綺麗なところなのではないでしょうか。
ただ、北海道も札幌以外は景気が本当にひどい状態です。
昔は石炭をはじめ産業がありましたが、今やすっかり衰退してしまい、
産業の象徴である鉄道も、線路はガタガタでボロボロです。
そこに来て新型コロナが追い打ちをかける状況で、
そのうち田舎の方は鉄道も維持できず廃線になってしまうのではないでしょうか。
前々回、九州の温泉が素晴らしいという話をしましたが、
北海道にもたくさん温泉はあります。
ただ、「日本」としては明治維新以降しか歴史がありませんので、
本州や九州でいうような“古き良き旅館”や“古い温泉地帯”というのは残念ながらありません。
以前、知床半島で川にお湯が沸き出ていて、そこの岩のところが自然の温泉になっているというので、
すごく期待して行ったのですが、残念ながら風情はありませんでした。
そういう意味では、本州、九州辺りで長い年月をかけて作られた旅館というのは、
世界に誇れる文化遺産だと思います。
私に言わせると、お寿司と和食と日本の温泉旅館というのは、
本当に素晴らしい日本の文化だと思います。
そのような魅力的な日本独自のものを守りつつ、
次の時代をどうやって生きて行くのかを考えなければいけません。
ただその前に、私がよく言っているように国家破産がやって来るでしょう。
大変な時代が、あと5~6年後から始まるなと思っています。
世界中を旅してきた私が、国内で大好きな九州と北海道について、
とりとめないまま思いを書かせていただきました。
最後にこれはおまけですが、日本で最も人口が少なく綺麗で美しい場所に行きたいなら、
道東をお勧めします。東京からは1日1便しかないのですが、中標津空港で降りて
レンタカーを借りて摩周湖から屈斜路湖辺りをめぐるのです。
あとは、知床辺りですね。あの辺りは森もありますし、本当に素晴らしいです。
ただ、気を付けてほしいのは、谷や川には一見きれいな清流が流れていますが、
そこから水は絶対に飲んではいけないということです。
特に生水には、エキノコックスというキタキツネが持っている寄生虫がいるため、
これが体に入ってしまったら大変なのです。
本州だと場所によっては沢に降りて清流の水を飲んでも大丈夫なのですが、
北海道だけはダメなのです。知らないでひどい目に遭う人も結構いるのです。
当然、キタキツネを見かけても絶対に触ってはいけません。
もし見かけて、どうしても餌を与えたいなら、投げて与えることです。
もう一つ、北海道のヒグマにも要注意です。
もし、ヒグマにうっかり遭遇したら、もう死ぬ覚悟をするしかありません。
本州で遭遇するのはせいぜい最悪ツキノワグマで、体もそう大きくはありません。
本気で戦えば怪我はしても死ぬ危険は比較的低いといえます。
もしツキノワグマに遭遇し、最後どうしようもくなくなったら思いっきり急所を蹴るといいそうです。
しかし、ヒグマは本当に大きいうえ、猛獣ですから戦っても望みは薄いでしょう。
クマの一番難儀な点は、逃げ切れないことです。
走っても人間より早いですし、木にも登りますし、泳ぐこともできます。
川に入ってもダメなのです。クマに出会ったら、本当に逃げ場がないのです。
野犬だったら木に登ってしまえば登ってきませんし、
ライオンだったら(日本にはまずいませんが)川にはあまり入ってこないと思います。
でも、クマだけはどうしようもないのです。
ちなみに、クマの中ではホッキョクグマが最強だそうです。
見た目はかわいい印象ながら、あれはもうどうしようもないくらい大きくて、
襲われたらそれこそ“一撃”でお終いだそうです。
今は、“コロナ”という目に見えない猛獣がいるので、
皆さん油断しないで頑張って生き残りましょう。 |