天国と地獄
 

2021年3月5日更新

第158 回 借金ほど怖いものはない

 

皆さんご存じの通り、現在の1万円札の肖像画は「福澤諭吉」です。
福澤諭吉先生が残した有名な言葉として、
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」が真っ先に挙げられますが、
私は福澤先生が自伝に記したある言葉に強烈なインパクトを受けました。
それは「およそ世の中に何が怖いといっても、暗殺は別にして、
借金ぐらい怖いものはない」というものです。

先生がわざわざ「暗殺は別にして」と暗殺を区別したのは、
彼が活躍した幕末や明治は、決して暗殺が珍しくなかった世だったからです。
特に、西洋のことを学問として勉強したり、
あるいは西洋の事を良く言うだけで、尊王攘夷の志士たちから切られたというほどです。
ですから、誰でも暗殺の恐ろしさはわかると思いますが、
福澤先生は「借金」の恐ろしさを、暗殺の恐ろしさと同列に論じているのです。

ところで、なぜ福澤先生は「借金」がこの世で最も恐ろしいものだと考えているのでしょうか?
それは単純明快で「借用すれば必ず返済せねばならぬから」と記しています。
福澤先生は、そうした理由から人生でたったの一度も借金をしていません。

慶応義塾大学を作った福澤先生は、
武士、蘭学者、著述家、啓蒙思想家、教育者としての顔を持ちますが、
私は先生が「物事の本質をきちんと理解していた」
(この場合、借金の恐ろしさを理解していた)ことこそが、
何より素晴らしいと思っています。
一万円札の肖像となっている福澤先生が借金の恐ろしさを論じているということを、
借金大国に住むに私たち日本人は、改めて心にとめておく必要があるのではないでしょうか。

誠に残念ではありますが、日本国政府はその教えに背くことをし続けています。
福澤先生は、誠実な人だったのでしょう。
「借金は絶対に返さなくてはいけないものであり、
それゆれ、借金をすることは恐ろしい」と考えていたに違いありません。
反面、日本国政府からは誠実さが感じられません。
国債を発行するに際し、「これは必ず返さなくてはならない」という
認識を持っているのか、いぶかしく思います。
最悪の場合、債権者(日本国民など)に踏み倒しを迫ればいいとすら考えているかもしれません。
なぜなら、返すつもりがあればさらに借金を増やそうなどとは
恐ろしくて思いもよらないはずだからです。

コロナ・ショック以前でも日本の政府債務は先進国で最悪の水準でしたが、
これがさらに膨らんでいます。
まだ確定していませんが、2020年度の歳出は175兆円くらいになりそうです。
新たに112兆円の国債を発行しましたが、
単年度(2020年だけ)でこの額を発行したのです。
税収は60兆円を切りましたが、税収の約2倍の借金をしているということです。

もちろん、感染症拡大のような非常時には財政出動が不可欠と言えます。
あのIMF(国際通貨基金)ですら、最近は過度な緊縮財政を戒めています。
しかし、いかなる事情があれども「必ず返さなくてならない」という
借金の運命から逃れることはできません。
近年は「MMT」(現代金融理論)のような、
「借金は、し放題でもよい」というような風潮が巷をにぎわせていますが、
ゼロリスク(副作用が全くない)の借金が可能であれば、
すでに無税国家が誕生しているはずです。
しかし、歴史的にも無税国家が誕生した形跡などありません。
無制限に借金を重ねた国家は、必ずやインフレなどのツケを支払わされています。

やはり、返済プランを考えておかなければいけないのです。
一国の財政に関する場合、「晴れの日に屋根を直す」(好況時に借金を返す)ことが鉄則ですが、
バブル崩壊以降の日本は晴れの日も借金を続け、
雨の日(不況時)にはさらにドバっと国債を発行するということを繰り返しています。
こうした状態が持続不可能なのは、火を見るよりも明らかです。
もはや、日本が破産する時期は確実に近付いていると言ってよいでしょう。

ご存知のとおり、今から70年程前の太平洋戦争においても日本国政府は巨額の借金をしました。
昭和19年(すなわち戦争に負ける前年)には、
国内総生産(GDP)比で204%の借金をしたという数字が記録されています。
ちなみに、昭和20年の数字は残っていません。戦後のどさくさでわからなかったのでしょうか。

戦争に負けたこともあり、日本国政府に返済能力はありませんでした。
その結果、昭和21年(戦争に負けた翌年)の2月に突如として「徳政令」が下されます。
国民は、度肝を抜かれたことでしょう。
当時の新聞には「けふ(今日)から預金封鎖」と淡々と見出しが掲げられていますが、
市井の人々はまさにパニックに陥りました。

徳政令は巧妙でした。
まず「新円切換」を発表し、今までの紙幣はいついつまでに使えなくなるとして、
それまでに手持ちの紙幣を銀行に預けるように、と訓告したのです。
そうなると国民は、現金を持っておくわけにはいきません。
銀行に国民のほぼ全てのお金が入ったことで、政府は国民の資産の全貌を把握したのです。
そして、預金に引き出し制限をかけました。
もちろん、全く引き出せないのでは生活に困るので、
今で言えばだいたい月20万円ほどは引き出せるようにしました。
そして、残りの預金に最大で90%の財産税をかけたのです。
この間、ハイパーインフレも進行しました。
国民の財産は徳政令とインフレで、文字通りほとんど消滅したのです。

このように、国民の資産と政府の借金を相殺した(言わばチャラにした)ことで、
言わば「ゼロからの戦後復興」が始まったのですね。
戦後復興=すぐさま高度成長とイメージしている人もいるかもしれませんが、
決してそうではありません。
昭和25年に朝鮮戦争が始まるまでは「戦後のどさくさ」と呼ばれた時代で、
「何をやってもダメ」というほどのひどい経済状況でした。
昭和25年のお正月には、松下電器の創業者であり「経営の神様」とまで称された
松下幸之助が側近にこう述べたと言われています――
「うちの会社も年末までもたへんかもしれんなぁ」。
あの松下電器ですら、潰れるかもしれないというわけです。
それくらい、ひどい景気だったのでしょう。
ちなみに、現在の日本の時価総額ランキングで1位のトヨタ自動車も、
この昭和25年に潰れかけました。

それを救ったのが、いわゆる「朝鮮特需」
(朝鮮戦争による軍需特需。米軍をはじめとした北朝鮮と対峙する連合軍は
日本を兵站とし、大量の軍事物資需要やサービス需要が日本に発生した)です。
この朝鮮特需はその当時まさに「神風」と呼ばれ、
日本に莫大な恩恵をもたらしました。
日本はそこから戦後の復興を遂げ、高度成長期に入って行くのです。
歴史に「もし」はありませんが、もしあの朝鮮戦争がなかったら、
日本経済はさらに5年くらいは瀕死の状態のままではなかったのでしょうか。
名だたる企業も存在していなかったのかもしれません。

歴史を振り返ると、国が破産すると、だいたい10年くらいはとんでもない状況が続きます。
ソ連の崩壊もそうでしたね。
コロナ禍は、近代において有数の経済ショックを与えましたが、
国家破産は「その100~1000倍くらい悲惨」と断言できます。
私たちの世代では経験したことのない強烈な
スタグフレーション(不況下のインフレ)が吹き荒れることでしょう。
恐ろしいことに、それが近づいているのです。
私の予測では、2026年くらいにこの国は破産するでしょう。

最近、日本を代表する三井住友系のシンクタンク日本総研の首席研究員が、
「このままでは、銀行から週5万円しか下ろせない時代が遠からずやってくる」
という主旨の衝撃的なレポートを発表しました。
また、日本経済新聞の電子版には、
将来の財産税をシミュレーションした記事が掲載されて話題となっています。
そこには、富裕層の資産に最高税率90%をかけたとしても
政府債務の3分の1にも満たない旨が指摘されています。
「日本の財政はすでに、『帰らざる河』を渡ってしまった」と記者は断じました。
あまりに衝撃的な内容であったため、紙媒体には載せられなかったと私は見ています。

では、私たち国民はこの危機にどう対応すればよいのでしょうか。
そこで今回、皆様に「あと5年で国は破産する!」と題したメッセージDVDを用意しました。
本編の後半には、私が培ってきた「国家破産対策」の全貌について詳しく述べています。
同封の資料も私の直筆のコメントを加えた“特別版”となっています。
老後をすばらしいものにするためにも、ぜひこのDVDをご覧いただきたいと思います
(お問合せ先、第二海援隊TEL:03-3291-6106)。

 

福澤諭吉先生も、まさか自分の没後120年で
日本が借金まみれの国になっているとは、
思いもよらなかったことだろう。
先生の肖像を使った1万円札の価値がなくならないうちに、
国家破産対策を万全にしていただきたい。  

(2021年2月 東京・御茶ノ水にて)