天国と地獄
 

2020年8月25日更新

第139回 世界でお気に入りの場所<その2>

 

マデイラ島はモロッコの沖合にありますが、モロッコも魅力的な所です。
実は、今年の5月にモロッコに行こうと思っていたのですが、
このコロナ騒ぎで行けなくなってしまいました。

モロッコは、今から17~18年前に会員様を連れてツアーを催行したことがあるのですが、
トルコのイスタンブールよりさらに異国情緒がありました。
もちろんパリやロンドンは一度は行ってみたい所でしょうが、
物価が安く、異国情緒に溢れて食事も美味しい、そしてホテルも安いのに素晴らしい、
そういうことで言えば、モロッコやポーランドがおすすめです。

モロッコは、太平洋と地中海に面した北アフリカの国です。
ハンフリー・ボガート主演の『カサブランカ』という映画がとても有名ですが、
今カサブランカに行くと工業地帯となっていてガッカリすると言われています。
映画に出てくる、昔のあのような風情は全くないのです。
それに対して今一番モロッコらしいと言われているのは、
世界遺産にも登録されている「マラケシュ」という街です。
不思議なことに、ここは建物が赤土の日干しレンガで建てられているために
街全体がピンク色なのです。

『スター・ウォーズ』という映画の第1作目を皆さんは見たことがあるでしょうか。
その中で、「ジェダイの騎士」の一人としてイギリスの有名俳優アレック・ギネスが出て来ますが、
彼は最初、とんがり帽子でゆったりとした丈の長い衣裳を着てきます。
実は、それが“ジェラバ”と呼ばれるモロッコの伝統衣裳なのです。
私はモロッコに行った時に「あ! これ、スター・ウォーズだ!」と思いました。
砂漠もありますし、恐らくスター・ウォーズの第1作目の3分の1くらいは、
モロッコで着想を得て作ったのではないでしょうか。

モロッコはイスラム教の国で、敬虔なイスラム教徒が多いかもしれませんが、
過激派もおらず、危険な国ではありません。
今年、モロッコの後に(アラブ諸国やイランと対立している)イスラエルに
取材に行く予定だったので、イスラエル大使館に行き、
「イスラエルに行く直前にモロッコに行くのですが、
モロッコ(つまりアラブの国)からイスラエルに入国する場合は
制限がありますか? 入国できませんか?」と尋ねると、
「そんなことはありません。イスラエル人もモロッコにたくさん行っていますよ」と言われました。
このようなことを言ったら失礼ですが、アラブ諸国の中で一番普通の国で、
テロもない、過激でもない、そういう意味でモロッコは安全性の高い国なのです。
しかも食事がおいしく、日本にもなかなかないような素晴らしいレストランもあるし、
日本人の口に合う野菜も多いのです。

街中のスパイス店の前で。
日本ではあまり見かけないスパイスが
店頭に積み上げられていた。

当時、ラグジュアリーホテルチェーンで名高いアマングループの「アマンジェナ」という
世界一のホテルがマラケシュ郊外にできたと知り、そこに宿泊したのですが、
モダンなアラビア風の造りの素敵なホテルでした。
“バサン”と呼ばれる100m×100mの人口の池を作って、
そこに夜になるとライトアップされた宮殿風の建物が映り、なんとも幻想的なのです。
しかし、夜、外で飲んで帰ってきた酔っぱらいがそこの池に落ちてしまうことがよくあるそうで、
まぁ、落ちても深さ50㎝くらいなので死にはしないのですが、
落ちたお客様を救うために夜中も池の周りの4ヵ所にボーイが立っていました。

ホテル自体がすごく広いのですが、私はスイートではなく少し格下のジュニアスイートという
クラスの部屋に泊まったのですが、あまりにも広すぎて“怖い”くらいでした。
リビングルームは20m×15mくらい、天井高が8mくらいあって、寝室もいくつかあり、
広すぎて怖くて夜一人で寝られないくらいでした。
しかも、外の巨大な庭には専用の大きなプールが付いているだけではなく、
“ガゼボ”と呼ばれるローマ皇帝が寝そべっているような円筒形の建物が4つも置いてあり、
カーテンが風の中でファ~っと揺れていました。
こんなに広くて豪華な部屋でジュニアスイートというのですから、驚きですね。

モロッコ滞在最後の日、お客様のために何か面白い趣向を凝らしたいと思いホテルに相談をすると、
アラブで一番最高のおもてなしは、砂漠の中にテントを張り、その中で美味しい食事を出し、
ベリーダンスなどを踊らせて鑑賞することだというのです。
ところが、生憎その日は雨の予報で砂漠での催し物は無理そうだと言われ
ホテル側にお任せしたところ、とんでもないことをやってくれました。

その日、ホテル側がやってくれた趣向というのは、私の想像をはるかに超えていました。
ホテルで最高級の部屋であるスイートルーム(一戸建て)に
私、お客様、同行スタッフの計8~10名くらいを招待し、
その部屋の一番広いリビングルームの電気を全部消して数千本のローソクを立て、
ローソクの明かりだけの部屋に豪華な食事を用意し、
そこにアフリカのアラブの楽団数名を呼んで、胡弓のようなものと太鼓を演奏してくれました。
そして、絶世の美女のベリーダンスです! 
トルコ辺りで観光のベリーダンスというと、
よくあるのがお腹がブヨブヨでスター・ウォーズのバケモノみたいな感じの
中年のおばちゃん(失礼!)ダンサーが踊るというものなのですが、
その時は本当にアラビアンナイトの世界を感じさせてくれるほどのすごい美女が
私たちの周りで踊ってくれたのです。
その中で食事やワインを楽しむという、最高の贅沢を体験することができました。

ツアーに参加された方々と。
最後の晩のおもてなしは、
今でも忘れることができない。

   (2004年12月 モロッコにて)

モロッコは、今はどれくらいの物価かわかりませんが、当時は日本の3分の1くらいでしたので、
ホテル代もパリであのようなホテルに泊まったらおそらく1泊70万円するところに
25万円くらいで泊まれました。
ただし、モロッコへは日本から直行便がないので面倒です。
たとえば、パリまで全日空かエールフランスで行って
そこからまた飛行機に乗り継いで行くのですが、そうすると4時間半くらいかかります。
しかし、述べましたように食事は美味しいですし、異国情緒溢れるモロッコは、
遠くても行く価値のある国だと思います。

次回は、ポーランドの話をしてみたいと思います。