天国と地獄
 

2020年8月17日更新

第138回 世界でお気に入りの場所<その1>

 

皆さんこんにちは、浅井隆です。
人生には3つの坂があると言います。
一つ目は“上り坂”、二つ目は“下り坂”、そして三つ目は“まさか”ですね。
今回、本当にコロナウイルスによる“まさか”がやって来てしまいました。

世の中というものは、本当にある日突然あっという間に変わってしまうことがあるものだ、
と今回つくづく思いました。本当に恐ろしいことです。
小さな目に見えないウイルスが、人類の歴史や経済状況をこれだけ変えてしまったのです。
4月には外出自粛の影響で、新幹線も乗車率ゼロという列車があったそうです。
今でも地方の沿線の私鉄などは、“1車両に誰も乗客がいない!”という状況も起きています。
1年前でしたらまるでSF映画のような世界が、いま目の前に広がっています。

このコラムを読んで下さっている方の中には飲食店経営やホテルなどの観光関係、
あるいは製造業で需要が蒸発したために受注が激減してしまい、もう生きるか死ぬかの状態、
という方がいらっしゃるかもしれません。
大変でしょうが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。陰ながら応援しております。

そのような暗い話題が多い中、今日はパッと明るい話題にしたいと思います。
今は海外に行くことが出来ないので、私が今までに行った海外で
非常に良かった所の話をしていきたいと思います。

一つ目は、2017年9月に訪れたモロッコの沖合800~1000㎞の北大西洋に浮かぶ小さな島、
マデイラ島。皆さん、ご存知でしょうか?
垂直の切り立った崖の上にお花畑がたくさんあるような素晴らしい島です。
かつてポルトガルを出港し、アメリカ大陸や新天地を探しに出掛けた船乗りたちが、
たまたまマデイラ島を発見し、あまりにも素晴らしいのでそこから先に行こうとせず、
その島に居着いてしまったと言うくらい、天国に近い島だと言われているのです。
私は偶然、「世界でぜひ行って見たい観光地」という英語のガイドブックを見ていたら
写真があまりにも素晴らしかったので、そこに行って見ようと考えました。

今とは違い、海外旅行バブルだった3年位前の話ですから、
ヨーロッパ中から多くの観光客が来ていました。
しかし、アジアから行くには不便で遠いので、
さすがに日本人を含めアジア人などはほとんどいませんでした。
特に私が泊まったホテルの周辺はこの10年で開発が進んだ場所で、
散歩するときも観光バスの排気ガスの中を散歩しているような所で少し残念でした。
もちろん、車で20分走れば山や海岸があるのですが、
街の中心部は拍子抜けするくらい開発が進んでいる所だったのです。

ですが、泊まったホテルはとても素晴らしいホテルでした。
ヨーロッパ風の庭は綺麗に整備されており、
しかも「特別な部屋に泊まりたい」とリクエストしておいたので、
かつてイギリスのチャーチル首相が泊まった特別室に泊めてもらうことができました。
孤島ですから、部屋のテラスからは北大西洋が見えて波の音がするのです。
そこから階段を降りて行くと広大な庭に出るのですが、
斜面に立っているので非常に起伏があります。
そこに迷路のような道があり、降りて左側に7~8分行くと朝食会場があります。
その下にはプールがあり、さらに降りて行くと今度は90度の崖の中に階段があって、
その下には波が押し寄せているビーチがあります。
そこでは、ボーイがパラソルとビーチチェアを持ってきてくれ、
そこで半日本を読んで過ごすというような、素晴らしい数日を過ごすことが出来ました。

泊まったホテルは断崖の上にあったが、
その環境を利用して眼下の海を
自分のもののように楽しめた。
あの英チャーチル首相も泊った部屋は、
本当に素晴らしかった。
マデイラ島では、「マデイラ・ワイン」が有名です。
ポートワインとはちょっと違い、特殊な作り方をする強いお酒です。
そのお店を見学しに行ったりもしました。
それから、ホテル内には素敵なイタリア料理店があり、それも断崖絶壁の上にあるのです。
到着した日は満月で、そこでシャンパンと赤ワインを飲みながら、
本当に映画や小説の世界にいるような感じがしました。
断崖絶壁の上にあるレストラン。
眼下には海が広がっている。

ポルトガルといえばヨーロッパでは「一番遅れた国」というイメージがあるのですが、
そんなことはありません。
観光で潤っている島なので(今は観光客がいないかもしれませんが)、
政府が相当お金を掛けたのでしょう。
「よく、こんなものを作ったな」と、信じられないくらい固い岩盤の山をぶち抜き、
すさまじいトンネルをたくさん掘って、島の裏側まで全部行けるようになっているのです。
そして、ハワイと一緒で貿易風が吹いているので、いつも同じ方向から風が吹いているために、
島の北側はいつも晴れていて、南側はいつも雨が降っているのです。
ハワイ島がそうですよね。

マデイラ島にはロンドン経由で行ったのですが(今、イギリスもコロナで大変ですが)、
コロナが収束して余裕があったら一度訪れていただき、
ヨーロッパにもこんな良い島があるんだということを感じていただきたいですね。
ただし、思ったより遠いのです。
ロンドン(ガトウィック空港)から飛行機で3時間半~4時間かかったと思います。
でも、長旅の後、その断崖絶壁の島に飛行機で降り立ち、
タクシーに乗った時の気分といったらなんともいえず爽快です。
皆さんも是非、行ってみてほしいと思います。

甘口の食後酒として有名な「マデイラ・ワイン」。
1929年という世界大恐慌の年に作られた
ワインをいただいた。

  (2017年9月 マデイラ島にて)