天国と地獄
 

2019年3月25日更新

第88回 天国の朝食

 

先日、ニュージーランドのクライストチャーチで不幸なテロ事件があり、
多くの犠牲者が出てしまいました。
犠牲者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(以下は事件前の執筆原稿です)

皆さんこんにちは。浅井隆です。
実は今、あることが終わったのですが、その感動冷めやらぬうちに収録しています。
前々回から、南米とりわけベネズエラやキューバなどとは違って
ニュージーランドは「天国」だという話をしてきました。

実は、その「天国」を先程味わったのです。

その正体は何かと言いますと、「朝食」です。
こちらにいる日本人の紹介で、ある日本人シェフに朝食を作っていただいたのですが、
それが少し変わったもので、いわゆる普通の朝食とはかけ離れたものなのです。
まず、食材から違います。
全てオーガニック野菜で、ジュースはコールドプレス(冷間搾汁とも言い、
果実を破砕してそのまま加熱することなく搾汁する方法。
一方、加熱して搾るのは熱間搾汁)という、
栄養素の破壊を最小限に抑える方法で搾汁されたものです。
今日(2月12日)の朝食は、「肺と腎臓お疲れさまです」というテーマで、
肺と腎臓をいたわる目的で作って下さいました。
なんと、15品もあります。
お品書きを写真に載せておきますのでご覧ください。

身体のことを考えた15品目の朝食。
どの料理も口においしく、
身体にやさしい。
この食事も平和で豊かだからこそ、
整えることが出来る。

全て気に入りましたが、私が特に気に入ったのは、
今述べました繊維たっぷりの「コールド・プレス・ジュース」と、
「くるみとごま入りみそ風味つくね」です。
後者は鳥肉をベースにくるみやごまが入っています。
塩やしょうゆなど、自分の好みで自由に味付けしてくださいと言われましたが、
何もかけなくても薄い淡い味わいがとても良かったです。
「噛めば噛むほど美味しくなる」とはこのことだと、改めて認識しました。

この朝食を作ってくれたのは、ヨシコさんという日本人女性です。
普段、私は食事の際、たとえばコロッケなどには、
人が見たら「洪水か!」というほどソースをかけて食べます。
コロッケだけでなく、どんなものにも調味料をたっぷりとかけます。
しかし、ヨシコさんの食事は、
ほとんどのメニューが何もつけなくとも美味しく食べられるのです。
味をあらたに付け加える必要がなかったのです。

ヨシコさんは、野菜を中心にオーガニックで質の高い食材を、
いかに健康的に食べるかということをベースに献立を考えています。
日本に限らず、世界的にもベジタリアン(ビーガン)、
ヘルシーフード、スローフードというものに脚光が当たっていますが、
ヨシコさんの食事法は味・栄養の面でクオリティが非常に高いと思います。

献立の内容に戻りますが、納豆は本人が作っているわけではありませんが、
ニュージーランドの南島で納豆を作っている人がいます。
もちろん、大豆は遺伝子組み換えではない、昔からある大豆です。
ですから、納豆も食べていて何とも言えない自然の味が存分に楽しめます。
身体が喜び、安全だなと認識しているのでしょう。

「夏野菜のエスニック炒め」も気に入りました。
私は生のトマトが苦手なので、トマトは少し炒めてもらいました。
あと私の大好物である「金平ごぼう」も食感が良く、素晴らしい一品でした。
「ぷちぷちご飯(発芽玄米と白米)」は、玄米だけでは食べづらいので
白米も混ぜてあるのですが、お米はオーストラリアでも良いものが作れるそうで、
食べてみたら確かに日本産と遜色ないものでした。
「オーストラリアでも、こんなにちゃんとしたお米ができるんだ」と感動しました。

これ以外にもいくつか小鉢が出ました。
生姜をベースにした佃煮のようなもの、
梅干の代わりにプラムを使って梅干風にしたもの、
それらをご飯にかけて食べるのですが、これもすごく美味しかったです。
あと、とっておきなのは「焼きぷちぷち」。
前述のぷちぷちご飯を焼き、少し焦がしておせんべい風にしたもので、
これにいろいろなものをはさんで食べるのですが、これも絶品です。
あと、香の物も全て現地で採れたものを使った自然な味わいでした。
味噌汁も美味しくいただきました。

昨今は「地産地消」と言いますが、昔は「身土不二」と言っていまして、
これは人間の身体と生まれた土地は一体不可分でひとつのものだという考え方です。
「自分の住んでいるところのなるべく近いところでとれたものを食べろ、
遠くからきたものを食べるな、それが一番体に良い」という考え方ですね。

おいしさを文章で表現するのはなかなか難しいですが、
とても素晴らしい食事に感動しました。
世界一ヘルシーな朝ごはんと呼んでも過言でありません。
ヨシコさんに感謝です。

私は、今までに世界中でありとあらゆるものを食べてきたと自負しています。
しかし、今回の食事はなにより健康的で感動したことを、
皆さんにお知らせしたいと思いました。
やはり美味しくて、素材の出所がわかり、ヘルシーなものを食べているときが、
最も幸せなのかもしれません。
この料理の写真を撮りました。ぜひご覧いただきたいと思います。

身体は食べたもので作られている。
食事で病気を直す治療法があるほど、
何を食べるかは大問題なのだ。



(2019年2月ニュージーランドにて)