天国と地獄
 

2018年10月5日更新

第71回 サービス業について考える

 

8月上旬、私は千葉県房総半島の海岸の近くに行き、諸用で館山に一泊しました。
少し季節はずれですが、ホラーに近いようなゾッとする話をしたいと思います。

宿泊先は知り合いが私に教えてくれた宿で、
私は去年もこの宿に来て近くに併設されている貸別荘に滞在しました。
貸別荘の近くにはとても美味しいお寿司屋さんがあって、
素晴らしいネタを出してくれます。
今回は、ちょうど出発日に台風が接近していたので中止しようかどうしようか迷ったのですが、
お寿司屋さんの大将が私のために3日も前から漁師の方々を駆けずり回って
アワビ、ノドグロ、キンメダイ、サザエ、イセエビ、その他10種類くらいの魚を
頑張って集めて下さっていると聞いて、出掛けることにしたのです。

前日に詳しく調べた天気予報では、
風はかなり強いけれどもぎりぎり向かうことができるという状況でした。
当初は、東京駅から外房線の特急列車で安房鴨川まで行って、
そこから普通列車を乗り継いで行く予定だったのですが、
この台風で列車も止まるかもしれないと思い、急きょ社用車で向かうことにしました。
第二海援隊の社用車は、東日本大震災の後に購入した四駆のハイブリッド車です。
非常事態が起きた時、ハイブリッド車でないと燃費が悪く、
途中でガソリンがなくなってしまう可能性があることと、
車高が高いので雨で地面が悪かったり道路が多少崩れたりしても乗り越えられることから購入しました。
久しぶりに、この車を自分で運転して出掛けました。

大荒れの房総沖。
この時の台風13号では死者9人、
行方不明者1名、
重軽傷者448人の被害が出ている。

私は、台風が最接近するのは宿に着いた日の深夜0時から3時くらいだろうと見ていました。
台風のスピードが遅いので、宿の中にいれば安全だけれど外に出たらとても危険で、
いくら車とはいえ何があるかわかりません。
そこで、帰りはお昼の11時から12時頃に宿を出発しようと考えていました。
宿に着いて、貸別荘を管理している女性に「チェックアウトは何時ですか?」と尋ねました。
その方が「10時です」と言うので、
「申し訳ないけれども、少し遅くなるかもしれない」と私が言ったところ、
「いいえ、ダメです。次のお客様がいるので、10時には出て下さい」という言葉が返って来ました。
そして彼女は、話をさっさと切り上げ出て行ってしまいました。
その前後には、緊急の避難準備情報が皆の携帯電話に届き、
その警報音が鳴り響いていました。
そういう状況にもかかわらず、彼女はそのまま行ってしまったのです。
私はもう、怒るというよりも呆然としてしまいました。

もし、私の社員がお客様にこのような対応をしたら、
即、辞めさせる! どころではないですね、「打ち首」ですね。
貸別荘といっても宿は宿ですし、お客様の命を預かるわけです。
台風が接近していて次の日はどうなるかわからないという時に、
簡単に「帰って下さい、10時に出て行って下さい」という対応は、
私は世界のどのような宿でも、どんなに安い民宿でも、
あってはならないことだと思います。
こういう事情の時は「居ていただいて結構ですよ。
掃除などで途中、お部屋に入らせていただくかもしれませんが」というくらいの
対応であるべきだと思います。
本当にびっくりして、肝が冷えました。
私の社員には、こういうサービスをしてはいけないと言い聞かせようと思いました。

今から8年ほど前、これと同じようなことが九州の宿でありました。
雑誌では「料理も美味しくて素晴らしい宿」と紹介されていたので行ってみました。
離れになっている宿でしたので、宿の女性が荷物を運んでくれたのは良いのですが、
私が彼女に続いて部屋の玄関に入ろうとする直前、
彼女は網戸を「バシャ」と閉めたのです。
私が入ろうとしているのに、「蚊が入りますから」と言って戸を閉めたのです。
「俺は蚊か!!」と心の中で思い、自分で戸を開けて入りましたが、
もう驚きを超えて笑ってしまいました。
これはまだ笑い話ですみますけど、台風の場合は命にかかわります。

どちらも「素晴らしいサービス」だと思います。
うちの社員がこのようなことをしたら「打ち首」ですが、
私も改めてお客様に対して気を付けようと感じました。
弊社には「自分年金クラブ」「ロイヤル資産クラブ」「プラチナクラブ」
そして「ダイヤモンドクラブ」があります。
そのお客様に対して情報提供していますが、お客様あっての商売です。
お客様に誠心誠意尽くすというのがあたり前のことで、
それがサービス業というものです。

幸い、夜は少し雨風が治まっていたので、
私を待ってくれている先程のお寿司屋さんに行きました。
このお寿司屋さんは、本当に素晴らしかったです。
建物自体はとても古いお寿司屋さんなのですが、大将から女将さん、
従業員の方々に至るまで、皆さんとても温かい方々なのです。
人間、最後は心ですね。
道ですれ違った人、同じ電車に乗り合わせた人などに対しても温かく接する、
そして何かあったらお互い助け合うという気持ち、
これが必要ですね。
私も心がけたいと思っております。

私をもてなしてくれる
ふじみ寿しの大将と従業員の女性。
ネタは新鮮で最高だ。

(千葉・館山にて 2018年8月)