天国と地獄
 

2017年6月15日更新

第24回 私の原点

 

緑あざやかなよい季節ですね。
私は5月末に静養を兼ねて伊豆の温泉に行ってきました。
その時につくづく大自然がいかに私たち人間にとって重要かを思いました。
旅館の窓から見える新緑に、心も身体も癒されたわけです。
緑色は人間にとって一番疲れない、良い色だそうです。
日本の九州もそうですが、中国などは環境破壊でPM2.5が空気中に大量に飛散していて、
本来人間が住むような環境とは言えなくなってきています。
経済活動が優先されすぎた結果といえるでしょう。
今回は、普段とはちょっと趣を変えて私の子供の頃の話をしたいと思います。

 
 




今回は浴衣姿の旅館でくつろぐ
浅井隆です。

(静岡県・伊豆にて)




 

私は経済の本を書き、海外ファンドの情報を提供したりしていますから、
一般の人から見たら金融や経済トレンドの専門家、
経済第一主義という風に思われているかもしれません。
しかし、実は私の心の根底には、いつも自然というものがあるのです。
なぜかというと、それは私が物心ついた時に千葉県柏市の常磐線の南柏の駅から4~5kmの所にある、
つまりバスで10分ちょっとかかる「光が丘公団」という団地に住んでいたことと関係があります。
それまでは千葉の市川に居たのですが、3歳位から小学校3年まで6年間を柏で過ごしました。
ですから、私の小さい頃の思い出というのは、柏がすべてなのです。

最初は今のように住宅地が全くなくて、公団の周りは林と田んぼだらけでした。
まるで“トトロの世界”です。
特に、小学校1年生くらいまでは森と昔からある田んぼと農家があって、
大自然がそのまま残っていました。
私が小学校1年生の頃は、トンボやバッタを捕りに行って、
カエルやオタマジャクシと遊んでいました。
田んぼでは、秋になると稲刈りをして、それを干していました。
最後に籾殻を燃やして煙がのぼる様子までを、ずっと見ていたものです。
そして徐々に開発が進んで、その風景が失われていくのも見ていました。

私の父親は国鉄マンだったのですが、
国鉄の官舎に移ってお金を貯めたいというので、
私が小学校3年の3学期に東京都板橋区の稲荷台という所に引っ越しました。
最初にその国鉄の官舎にタクシーで行った時、
車窓から見えるイメージは「灰色」でした。
森がなくて緑がなくて、住宅と工場とかろうじて川があるだけ。
川といってもコンクリートで囲まれた石神井川でした。
それを見て、私は呆然とした記憶があります。
緑いっぱいの生活から、コンクリート色の都会の生活に変わった時のショックは、
いまだに忘れられません。
そしてそれが、自然というのは本当に大切で、
自然がないと生きていけないという私の考えの原点になっているのです。

ですから、私がニュージーランドを非常に好んでいるのも、
ニュージーランドには緑が多く、空気が世界一きれいで、
原発もない……そういう美しい自然のままの状態に強く惹かれているからです。
以前のブログでも述べて来ましたように、
ニュージーランドには年に2ヵ月、1ヵ月ずつ滞在している理由はそこにあります。
私は東京でも都心には住んでいません。
本当は都心のタワーマンションにでも住めば会社が御茶ノ水ですし便利なのですが、
少し郊外に住んでいる理由は緑が少しでも多い所に居たいという、
そういう気持ちからなのです。

私たち人類というのは、今や人工知能や電子マネーなど非常に進化したIT、
その他の技術を持っているわけですけれども、
最終的には生身の生き物なので
水、食べ物、塩、空気、これらの良い物を摂取しないと
病気になったり健康を害してしまうのです。
ですから、自然の豊かさと恐ろしさ、
この両方を深く認識しながら自然をどう享受させて頂くかを考えながら
生きていかなければなりません。
自然の中で生かされているという気持ち、
自分で勝手に生きているわけではないという思いです。
自然を壊して、地球を破壊してしまえば、
最終的には人類が滅びるという事の恐ろしさを知らなければいけないのです。

自然の猛威といいますか、「3・11東日本大震災」という地震と津波と
それによる原発事故がありましたが、
その時、多くの命が失われていった様子を目の当たりにして、
人間の無力さを思い知りました。
火山噴火の怖さについても最近よく考えます。
詳しくは私が先日出版した「世界沈没」という本に書いてありますが、
是非それを読んで頂き、今まで私たちが体験したことのない災害に見舞われる可能性にも、
思いを馳せて頂きたいと思います。

そして、ご自身があと何年生きられるか、
私なんか62歳ですからあと20年ちょっとしか生きられない可能性がありますけれども、
次の世代である自分たちの子孫に何を残すことができるかを
お互いに考えたいものです。
その時に、自然をなるべく壊さずに残していくということを、
最も大切なこととして考えていきたいのです。

浅井隆