コラム天国と地獄
 
2016年9月15日更新

第1回 イギリスにて

 

皆さん、こんにちは
浅井 隆です。
現在、イギリスのロンドン郊外に来ています。
ご挨拶後、第一回目がイギリスという事も何かの偶然か、不思議な感じがします。
と言いますのも、現在の日本とかつてのイギリスが非常に似た状況、
あるいはまったく似た状況になっているからです。
それについて、詳しく説明していきたいと思います。

 
  伝統ある教会・Bath Abbeyにて
(2016年9月)
 
 

先史時代の遺跡・
ストーンヘンジにて
(2016年9月)

 

イギリスはいまはとても豊かな国です。
ロンドンは今、世界一不動産が高いと言われています。あのNYより高いのです。
ロンドン中心のマンション、こちらではコンドミニアムと言いますが、
それらが今、世界一の高値に張りついています。
これは、かつてサッチャーがイギリスを大改革した金融ビッグバンの際、
イギリスの金融街・Cityが活性化して世界中からマネーが集まり、
さらにイギリスはアメリカとは違う巧妙な戦略をとり、
アラブのオイルマネー、ロシアの大金持ちのお金を流入させて
イギリスの不動産を押し上げ、イギリスを豊かにしてきたためです。

ところが、現在のイギリスの状況からは考えられないかもしれませんが
第二次大戦直後、大英帝国は戦争による借金で首が回らなくなり、
GDP比で269%という巨額の借金を抱えて困難な状況に陥っていました。
今の日本はどうかといいますと、アベノミクスの裏に隠れて一般国民には見えませんが
財政は極めて深刻な状況で、借金はGDP比で250%、
ほぼ大英帝国の第二次世界大戦直後に近づいています。

先日、お盆の時期に日経新聞は日本国債の特集を一面のトップ記事として5回連載しました。
その最後の記事は「今の日本の借金は異常であり、
下手をすると最後には預金封鎖をするかもしれない」という事を
暗示する文章で締めくくられていました。
というわけで、日本の財政状況は深刻かつ危機的な状況といってよいでしょう。

しかも、当時の大英帝国と比べて決定的な違いがあります。
それは何かといいますと当時のイギリスの場合はドイツのヒトラーと戦うための戦費でしたが、
日本の場合は戦争ではなく主に社会保障費、あとは公共事業のバラマキによって
借金が膨らんできたということです。
戦費は戦争が終われば激減しますが、社会保障費はそうはいきません。
人類史上初と言われるスピードで老人大国化が進む日本は、
今後ますます社会保障費が増えていくのです。

では、イギリスはその後どうなったかといいますと、デフォルト、預金封鎖には至らず、
30年をかけて金融抑圧という国民から徐々に資産を奪うというやり方で
見えざる税金をかけました(1975年頃『英国病』と呼ばれる)。

丁度その頃二十歳だった私は、リュック一つで半年かけてヨーロッパを見て回ろうと旅立ち、
その大半4カ月をイギリスの田舎街ボーンマスというところで語学留学してすごしました。
当時、イギリスを走っている車を見て驚いたことがあります。
なんと、車のドアが木だったのです。
どういう事かといいますと、古くなって壊れた車のドアをはずして、
そこに自分たちで木のドアをつけて走っているのです。
それを見た私は、「なんて貧しい国なのだろう」と思った記憶があります。
それが今は一転、豊かな国になりました。
では日本はどうか!?
という訳で、第二回目を期待して頂きたいと思います。

次回のコラムは日本のバラマキ、衆愚政治、ギリシャとの比較、
日本の将来についてお話ししようと思っております。

浅井隆