天国と地獄
 

2023年9月1日更新

第227回 不思議な小康状態

今回は、最近の日本経済の状況についてお話しします。

昨年は日本国債が売り浴びせられ、それを日銀が買い支えた反動として急激な円安が進み、
それを是正するため昨年12月20日に、日銀が長期金利を上げざるを得ない状況となりました。
10年物国債の許容金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げるという、
大事件が起こりました(植田日銀になって7月に、さらなる政策変更を行ないました)。
今年はその状況からうって変わり、「不思議な小康状態」が続いています。
これには理由が二つあります。一つは「国債」、もう一つは「株」です。

国債は、昨年と異なり今のところ安定しています。
特に“植田日銀”になってから安定していますが、
実は、これには“とんでもないからくり”があります。
日銀が国債をほとんど持っているのですが、
その日銀が国債の貸し出しをやめているのです。
日銀が国債を市場に貸し出すことによって、
今まで外資系金融機関などが日本国債を借りてきて売ることができたわけですが、
その貸し出しをストップすることで日本国債を売れないようにしているのです。

これにより国債の金利は安定しています。
ですから、現状は「非常に歪んだ、一時的な構造」
であることを認識しておいた方がよいでしょう。
さらに株式では、今年に入ってから特に4月以降大きく上昇し、
ここへきて少し足踏み状態ではありますが3万4,000円も遠くない(2023/8/8現在)状況で、
バブルピーク時の4万円も間近だと言われるくらいに好調な状況になっています。

ただその反面、別の症状が起きています。
それは、じわじわと進む“円安”です。
8月末には一時1ドル=147円台を付ける程、円安がじわじわと進んでいます。
為替は、昨年10月21日にほぼ152円という水準があり、
そこで慌てた政府が緊急の介入を行なったことで、一気に127円に押し戻されました。
その後、少し上下していましたが、今またじわじわと円安になってきています。

この状況は、日銀が国債の金利が上がらないように買い支えて、
しかも外資に売られないように貸し出しをやめていることで、
その歪められたエネルギーが為替の方に吹き出し始めているのです。
つまり、日本の国力低下および財政悪化が進んでいる表れなのです。
ですから私は、これは“将来の財政破綻の前兆”と見ています。
海外ほどではないにしても、日本も輸入インフレが止まらず、
さらにこれから先も食料品などの値上げが続くでしょう。

というわけで、私はこの小康状態の後に、とんでもないことがやってくると思っています。
いよいよ運命の時「Xデー」、つまり“本格的な国家破産”が迫っているのです。

その国家破産に関して、私は3つのシナリオがあると見ています。
1番目は「緩やかな衰退」です。
つまり、国家破産と言っても「徳政令」などのとんでもないことが起こるわけではなく、
徐々に日本がゆで蛙のように衰退して行くことです。
2番目は、日本国民や政治家が「これはまずい!」とようやく気付き、
「かなりの痛みを伴う大改革を実施」することです。
たとえば、年金を半分にして歳出削減もきちんとやる、
つまり政府の支出は税収に合わせて行なうという大改革です。
3番目は、「とんでもないイベントが起きて、一気に崩壊してしまう」というシナリオです。
そのイベントとは、「台湾有事」や「南海トラフ地震」のことです。

さぁ、どのシナリオになるのでしょうか。
これは私見ですが、「緩やかな衰退」、これは確率としては30~40%です。
2番目の「大改革」、これは確率ほぼ0%です。国民はそんなことは望んでいませんし、
政治家もそんなことを選挙で落選する覚悟でやるはずがないのです。
となると、一番起きそうなシナリオ(確率60~70%)は、
やはり3番目の「巨大イベントが起きて一気に崩壊」です。
ですから、このコラムをご覧いただいている皆さんも、
国家破産への準備をぜひきちんとして頂きたいと思っております。

そのような中で私はここ数年、「ダイヤモンドを買っておきなさい」と言い続けています。
なぜなら、過去に金(ゴールド)は混乱時に没収の対象になったり
換金できなかったことがありますが、一方でダイヤモンドはそうではないからです。
すでに弊社の会員の方であれば、多くの方がダイヤモンドで
きちんと対策を行なっていると思いますが、まだの方はぜひ実行してください
( 詳しくは「第二海援隊 ダイヤモンド投資情報センター」に
お問い合わせ下さい。℡:03-3291-6106)。

今回のコラムを閉じるにあたり、財政破綻に関するさまざまな方の名言を挙げておきます。
1番目は、手前味噌ですが私が作った格言で「天災と国家破産は忘れたころにやってくる」です。
国家破産と言っても、「まだ何も起きていないじゃないか」
「予算も粛々と実行されているし国債も売れているじゃないか」と言う方もいるでしょう。
ただこれは、実は日銀が国債のほとんどを買い占め、金利を押さえつけるという、
やってはいけないことをやっているだけの話であって、
これが限界を迎えると一気に崩壊してしまうのです。
今まで長い間、何もなかったからと言って危機に対する心構えを忘れてしまってはいけません。
ですから私は、この格言を皆さんに送ります。
忘れたころにやってくる「その日」は、そう遠くないでしょう。

2番目は、チェコの有名な経済専門家トーマス・セドラチェクという人の言葉です。
最近の新型コロナ、そしてリーマン・ショックからずっと世界中の政府の借金が増え続けています。
特に、新型コロナによって一気に増えたわけですが、それに対して彼はこう言っています。
「借金を重ねる政府の行為は、火を火で消そうとするようなものだ」と。
水ではなく、火で火を消すなどということは到底あり得ないことで、
借金を借金で帳消しにしようとしている、異常な状況だということです。
これは、非常に意味の深い言葉だと思っています。
そして最後になりますが、吉野直行元慶應義塾大学教授(現名誉教授)の言葉です。
「このままでは日本はIMF管理下になる」。

私たちは、こうした研究者たちの警告を胸に刻み、じっくり吟味し、
来るべき大変な時代を生き残って行きたいと思います。

 

“その日”はある日突然、私たちを襲う可能性が最も高い。
その時慌てても、全ては“あとの祭り”である。
地震と国家破産は連動する可能性が高いから、
地震対策をしている方は国家破産対策も抜かりなくやっていただきたい。
         (2023年7月 上野・韻松亭にて)