|
|
2018年11月25日更新 |
第76回 香港バブルのド天井 |
10月末から11月頭にかけて、緊急取材のため香港へ飛んできました。
目的は、香港のバブルを実際にこの目で見ることです。
2019年の年明け早々『最後のバブルそして金融崩壊』(第二海援隊刊)という本を出版するのですが、
その本に今回の取材内容を盛り込みたいという思いもありました。
世界中の投資家が重宝している、UBSグループ算出の
「主要20都市グローバル不動産バブル指数」という指標があるのですが、
このほど出された2018年版では、香港に「最もリスクの高い都市」という位置付けがなされました。
英フィナンシャルタイムズ(8/17付)によりますと、
現在の香港では、わずか11平方メートルほどの物件がなんと228万香港ドルで売りに出されているのです。
米ドルに換算すると29万ドル(日本円では約3,248万円)で、まさに異常というほかありません。
私が訪ねた香港の不動産の専門家は、「香港の不動産価格は、たいしたことない。
ニューヨークやロンドンの方が上でしょう」などととぼけていましたが、
私はニューヨークもロンドンも見てきたうえで、
香港こそが“最悪”の不動産バブルに陥っていると確信しています。
私は実際に多くの物件を見て回りました。
今回は、先方の不動産業者が専用車を用意してくれ、通訳を含めたスタッフが4人もいました。 |
肝心の不動産価格はと言いますと、
東京でいうと都心から少し離れたエリア、
すなわち千代田区ほど中心ではないが
23区で山の手線内といったところでしょうか。
そこの150平米のマンションが、
安いもので10億円、
高いもので13億円という具合でした。
これが東京ですと、
1億5000万円くらいだと思います。
すなわち、香港の不動産は
東京の7倍くらいで取引されていると考えられます。
私は物件を紹介してくれた
不動産業者に感謝しましたが、
心の中ではこう思ったのです
――「こんな物件を喜んで買う人の
頭の構造が知りたい」と。
しかし、現地の日本人には、
まだまだ強気の人がいました。
彼らはこう言うのです。
「香港の事情は日本やその他の国とだいぶ違う」と。
香港ではテレビで常に市況が映し出されるくらい、
市井の人は株をやり、
チャンスがあれば不動産を買いたいと
思っていると言うわけです。
要は、不動産に対する需要が常にあると
言いたいのでしょう。 |
|
香港で販売していたマンション。
これが10億円以上もするとは、
にわかには信じられないものだった。
明らかに“バブル”であった。 |
|
|
これは、香港に限らず大陸(中国本土)にも当てはまることですが、
中国人は不動産を所有していないと結婚できないと言われています。
住宅を持っていないと女性から相手にされないのです。
だからこそ、家族や知人から借金をしてでも不動産の購入にこだわる人が多いのです。
これは事実なのですが、そうだとしても現在の価格を正当化することなどできません。
世界20ヵ所に拠点を持つデータ会社「CEIC」によりますと、
2010年の香港のインフレ率を加味した実質住宅価格を100とした場合、
今年3月1日時点の指数は185.69となっています。
香港の住宅価格は、1997年のアジア通貨危機を皮切りに
ドットコム・バブルの崩壊を経て2000年代初頭に近年の大底を付けるのですが、
そこから現在まで4倍ほどの上昇を記録しています。
やはり、“深刻なバブル”だと言わざるを得ません。
ところが、ここに来て異変が生じてきています。
それは香港ドルが米ドルにペッグしているため、
FOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げに歩調を合わせるように、
香港でも金利が上がっているためです。
事実、2018年にHSBCを含む多くの銀行が、住宅ローンの金利を引き上げています。
またこの秋、中国本土と香港の株価が、主要国では最も早く弱気相場入りしました。
香港人は不動産を株の延長線上にあると考えているため、
若干ながら買い控えの雰囲気が生じているのです。
現地の不動産業者も「現在なら交渉可能だ」としきりに言ってきました。
リーマン・ショックによる調整以降、ほぼ毎月のように不動産価格が上がってきたため、
完全に売り手市場となっていたのです。
私は「ラッキーな時に来たね」と言われました。
もちろん、私はそうは思いません。
これは、大調整が起こる前兆だと考えています。
現在、中国の習近平政権は米中貿易戦争の影響もあり、
財政と金融政策を再び緩和する方向に舵を切っているように思います。
ですから、すぐに現在のバブルが崩壊するとは思っていませんが、
早ければ来年中には本格的な調整局面に入ることでしょう。
私は、“香港バブルのド天井を見た“のだと思っています。
|
|
香港の不動産業者は女性が多い。
(香港・香港島にて 2018年11月) |
|
|
|
|