スペイン旅行記の続きです。
グラナダからマラガまでは車で移動したのですが、
昔と違ってスペインの高速道路は日本以上に発達していますので、
所要時間は1時間半くらいでした。
かなり速く、スムーズに移動することができました。
「マラガ」という街は日本ではあまり知られていませんが、
ヨーロッパでは「避寒地」、
つまり冬の寒さが厳しいヨーロッパで寒さをしのぐ暖かい場所ということで、
別名「コスタ・デル・ソル」=「太陽海岸」と呼ばれています。
地中海沿岸に位置するためスペインの中でも一番暖かく、
一番大きな街です。
観光地としても有名で、ヨーロッパ中からマラガへの直行便がたくさん出ています。
そのマラガでは、知り合いと会いました。
一緒に海岸に面した「海の家」のような、
いたって普通のレストランに入ったのですが、
そこでは夏の間だけ串に刺した小イワシを炭火で焼いていました。
ただ焼いて、塩をかけただけの料理なのですがこれがなんとも絶品で、
スペインに10日間滞在していろいろな料理を頂きましたが、
この小イワシが一番美味しかったのです。
美しい海辺を眺めながら、味わっていただきました。
その後、再び3時間ほど高速に乗って、「コルドバ」へ移動しました。
コルドバに着く手前にひまわり畑が延々と広がっている場所があって、
その見事な景色を眺めながら街に入りました。
コルドバは、年配の方はご存じかもしれませんが
「コードバン」という堅い革製品の語源になったと言われています。
こちらに来て食事のメニューを見てわかったのですが、
スペイン語では「コルドバ」、英語では「コードバン」と表記されているのです。
つまり「コルドバ」の英語名は「コードバン」ということです。
おそらく戦後、進駐軍が日本を占領していた時、
彼らが革製品のことを「コードバン」と言っていたことから日本に入って来たのだと思います。
このようにコルドバは、革の産地として有名な人口30万人程度の古い歴史のある街です。
「メスキータ」という世界遺産もあります。
この「メスキータ」とは何かといいますと、
スペインは最初、イスラム教の支配下にあったためにイスラム教のモスクが作られました。
その後、キリスト教がスペインを回復していく中で、
元のイスラム教のモスクを使いながら一部をキリスト教の礼拝堂に変えていったのです。
その建物を「メスキータ」と呼びますが、
イスラム教とキリスト教の融合美は本当に素晴らしく、見応えのあるものです。
皆さんもスペインを訪れる機会がありましたらぜひ、この「メスキータ」を見て頂きたいと思います。
コルドバは小さな街で、古い旧市街を歩けば車がやっと1台通れるような細い道が続きます。
そこに花で飾られた家がたくさんあって、素晴らしいところです。
スペインを代表する場所と言っても良いと思います。
ただ、6月は本当に暑い時期で、外気温は34~35℃にもなります。
実際に路上で計れば、40℃を超えているというほどですので、
長時間歩くのはきついです。
アイスクリームを食べながらペットボトルのお水を持って歩くような、そんなところです。
その後、新幹線で約50分かけて「セビリア」という大きな街に行きました。
セビリアは、「セビリアの理髪師」という戯曲で有名ですね。
私はセビリアを訪れるのは2回目なのですが、
皆さんが行かれたらさぞかし驚かれるだろうと思う場所があります。
それは「セビリアの大聖堂」です。
ゴシック建築の教会の中では世界一の大きさだと言われており、
大聖堂の中にはあの有名なコロンブスのお墓もあります。
スペインは一時、ポルトガルの後を継いで世界中の富を集め、
世界の覇権大国だったわけですが、
その時にイサベル女王など王侯貴族が実際に居を構えていたのがこのセビリアなのです。
ですから、日本で言えば京都のような古都にあたります。
今はマドリッドが首都ですが、マドリッドはせいぜいこの300年くらいの歴史しかなく、
本当の意味での古都はセビリアです。
|
コロンブスのお墓の前で。
イタリア人のコロンブスの航海を援助したのは、
スペインのイサベル女王だった。 |
セビリアという街は、地中海から少し川を上った所にあるのですが、
当時の船は皆、セビリアを経由したのだと思います。
そこからジブラルタル海峡を抜けて北大西洋に出て、
インドを目指して西に向った結果、アメリカ大陸を発見したのがコロンブスです。
このように、コロンブスの探検隊も実はこのセビリアから出発しているのです。
そして、当時の世界を支配したスペインはこのセビリアに世界中の富を集めて、
大聖堂の中に高さ20mもの大祭壇を造りました。
これは、インカ帝国を滅ぼして南米から持って来た金・銀・財宝で造られており、
その総量は500㎏とも数tとも言われています。
これこそが、私が皆さんが行かれたら驚かれるだろうと思う本丸なのです。
これは余談ですけれども、トム・クルーズとキャメロン・ディアスが出演している
『ナイト&デイ』というコミカルなアクション映画があります。
その映画のラストシーンに、このセビリアが出てきます。
トム・クルーズとキャメロン・ディアスがオートバイに二人乗りして悪役と戦うのですが、
ちょうど牛追い祭りの牛たちに行く手を阻まれて
大騒ぎになるシーンも、このセビリアが舞台になっています。
いずれにしても、今アメリカが覇権大国から降りようとしていて、
中国が次の覇権大国か、という端境期に来ています。
そういう意味では、私が以前から言っている
「覇権の移行」(第55回コラム参照)の流れで、
ヨーロッパ中心の800年間がもうすぐ終わろうとしています。
この800年間のヨーロッパの時代においては、
まずベネチア、ルネサンスのイタリア、
次に大航海時代のポルトガルとスペイン、
その後にスペインの植民地だったオランダ、イギリス、アメリカと西洋の発展が続いてきました。
その流れが、いよいよ終わろうとしているのです。
このヨーロッパの時代の流れの中で、
スペインはイタリアの次に覇権大国となった国であり、
その中心が実はセビリアであったというわけです。
ですから、世界の歴史を知りたい、世界の動きを見たいという方にとっては、
このセビリアという街はぜひ来てみるべき街だと思います。
バルセロナにある教会「サグラダ・ファミリア」も面白いとは思いますが、
スペインで1ヵ所だけ行くとしたら、私はこのセビリアを選ぶと思います。
その次に、前回ご紹介したアルハンブラ宮殿があるグラナダ、そしてコルドバかなと思っています。 |