天国と地獄
 

2018年1月9日更新

第44回 年頭に想う──人生において大切なこと

 

皆さん、新年あけましておめでとうございます。
私は出張で海外に出かけることが多いのですが、
年末年始と夏のお盆、つまりお正月と広島・長崎の原爆記念日、
終戦記念日がある時期だけは絶対、日本にいようと思っています。
というのも、やはり日本人としてこの時期は心が引き締まるのと、
特に年末年始は新年を迎えるにあたって今年1年をどういう年にしようかと
思いを馳せる時期でもあるからです。

私は今63歳で、生まれたのは昭和29年です。
終戦から9年目の、日本がまだ高度成長期には入っていないけど
朝鮮戦争から4年経ち、復興を始めたという時期です。
ですから、戦後の歴史全部とは言いませんが、
成長過程のほとんどを見てきました。
そういう意味では、ラッキーな世代かなと思っています。
子供の頃は「ALWAYS三丁目の夕日」の映画に出て来るような風景の中で育ちました。
当時のお正月というのは、今よりも貧しかったけれどももっとお正月らしくて、
お店もどこも、皆が休んでいました。
そして、家族でこたつを囲んでお餅や煮豆や保存食などを食べていました。
今はもう、スーパーやデパート含め元旦から営業している所がたくさんあります。

皆さん一人ひとりにお考えがあると思いますが、
私たちはあくまで日本人でしかなく、どう転んでも白人にはなれません。
また、なりたいとは思いませんが、中国人にもなれません。
20歳の時、留学なんてかっこいいものではありませんが、
ヨーロッパへ超貧乏旅行に出て、英語の語学学校に入って英語を勉強しました。
日本の大学に入学してから、アルバイトをして資金をためて6ヵ月間、
ヨーロッパを見てきたのです。
そのうちの半分以上をイギリスで過ごしたのですが、
1度イギリスで白人から人種差別を受けました。
イギリス人の家庭でホームステイをしていましたから、
常に白人と英語で会話をしています。
すると、鏡を見ている時以外は、私自身も白人のような気分になってくるのです。
しかし朝、目が覚めてぱっと鏡を見ると、
そこに黄色人種の自分の顔があるわけです。

その頃、私は3軒目のホームステイ先にいました。
太った、いかにもイギリス人らしい80歳くらいのおばあちゃんが住んでいる家でした。
そのおばあちゃんが私の部屋に入って来て、
世界地図を見ながら「日本はどこだい?」と聞いたのです。
私が「ここだよ」と答えると「へぇ、こんなに小さいんだね。中国はどこだい?」と聞きます。
私が「ここだよ」と指し示すと、おばあちゃんは
「日本は中国の何州なんだい?」と聞いてくるのです。
思わず「えっ?」と驚きました。
当時のイギリスの田舎のおばあちゃんなどは、日本が独立国であることも知らなくて普通でした。
ですから、西洋人から見たら中国人も日本人も見分けがつかないでしょうし、
彼らから見たらひとくくりに黄色人種なのだと思います。

私たちは、稲を育てながら、この島国に何千年も住んで独特な文化を育んできました。
梅雨時は特に湿気が多いので、その湿度の高い気候を活かして
納豆、みそ、しょうゆといった発酵食品が作られました。
ペリーが来航するまでは文化・文明は全て中国大陸あるいは朝鮮半島といった
西側から流れてきていました。
文字もなかったこの国が漢字を輸入して、
そこから「ひらがな」「カタカナ」を作りました。
そうやってこの島の中でここまで生きて来たわけです。
私たちは、世界に冠たる文明文化を持っていると言えます。

自分の国の食事ということで、
特に年を取ると「和食」が食べたくなります。
これは「郷土愛」というか、「国」に対する愛情の表れの一つだと思います。
日本という、この島国に住む私たちがこの日本を想う気持ち、
「祖国愛」とでも言いましょうか。これが大変重要だと思っています。
今の日本の官僚や政治家を見るとあまり彼らを愛する気持ちにはなれないのですが、
日本そのもの、日本の文化に対する深い愛情は私にもあります。
ですから、海外に出かけることが多くてもお正月は日本にいますし、
終戦記念日の前後には日本にいて枝豆を食べている、というのが私の姿です。

1年の始めにあたって、2つのことを皆さんにお伝えしたいと思います。
前回のコラムでも述べましたが「世の中がどんどん変わっている」状況の中に私たちはいます。
オバマ大統領が来日して、広島で「将来、核がない世界を」と言っていたのに、
翌年にはもう日本は核ミサイルに攻撃されるかもしれないという恐怖にさらされている、
そのくらい変化のある時代です。
そこで、重要になってくるのは次の2つのことです。
それは、その変化を嫌がったり怖がったりするのではなく
「変化を受け入れる度量」と「本質を見抜く目」です。

表面的変化があっても変わらないものがあります。
それは人間の本質、それから世の中の本質です。
たとえば、私はいつも「借金ほど怖いものはない」と言っていますが、
これは個人であろうが国家であろうが関係ありません。
個人あるいは国家の体力を超える借金をした場合、必ず破綻します。
こういうものを“本質”と言います。
今、日本の経済は一時的にアベノミクスで良くなっているように見えますが、
私は必ず破綻すると見ています。

そして最後に、もっと大事なことをお伝えします。
それは皆さんの「健康」です。
今、日本人は2人に1人はガンになると言われています。
今後、もっと増えるかもしれません。
一体、これはなぜなのでしょう?

先進国の中でこんなにガンになる人が増えているのは
日本だけです。
この原因も考えなければいけません。
アメリカは、すでにガンになる人が減っています。
というのも、ずい分前からアメリカは
国家的な戦略として
「野菜を食べよう運動」を行なっていて、
国民全体の野菜の摂取量が増えているのです。
逆に、日本はその摂取量が減っています。
でも、原因はこれだけでしょうか?
農薬の問題や、あるいは多種多様な薬の飲みすぎなども
関係しているのではないかと感じています。
これについては皆さんもいろいろな意見がおありでしょうし、
ご自身の体験も含めてお考えが違うでしょう。

ただ1つだけ言えることは
「予防に勝る治療はない」ということです。
重篤な病気になってから病院に行っても、
お医者さんだってそんなに簡単に治せるわけではありません。
やはり天から、そして親からもらった身体を大事にして、
自分の体質に合った健康法や予防法を取り入れて、
元気な身体で素晴らしい1年を
送っていただきたいと思っています。

浅井隆

 

 

朝のウォーキングスタイル。
ウォーキングは健康維持に
とても効果的です。

ニュージーランドにて 2017年12月