天国と地獄
 

2017年11月24日更新

第40回 真実を直視する

 

このコラムも、はや40回目となりました。
前回、前々回と「賢者の道」「国家破産対策」について話してきましたが、
ほとんどの人は日本経済、あるいは日本という国が
大きな危機の直前にいるとは思っていないと思います。
前回の衆議院選挙の時、
与党も野党も日本経済に関していろいろなことを言っていましたが、
1つだけ共通していたことがあります。
それは、“未来に対する財政の見通しが全くない”ということです。

日本の借金は、まさに天文学的な額に到達しているのですが、
一番問題なのはそれを減らそうという意識がないということです。
今は日銀が大量に国債を買って、
異次元緩和を繰り返しているから何とかもちこたえていますが、
いつか必ず限界が来ます。
少子高齢化も加わって若い人の人手が足りなくなり、
人材は売り手市場で確かに一見景気が良いように見えます。
東京の不動産価格も、場所によっては数年前から2倍になりました。
しかしそれは、金利が異常に低いことですべて成り立っているのです。

この間、G20(20ヵ国財務大臣・中央銀行総裁会議)が開かれて、
そこでついに日本は「プライマリー・バランス」の2020年の公約を放棄すると発表したのです。
「プライマリー・バランス」とは、
日本語に直訳すると「基礎的財政収支」と言って
税収で必要な経費をまかなえている、という意味です。

たとえば、日本の社会保障から始まって教育費、公共事業費、防衛費など
政府が使っている一般的な経費を税収でまかなうことができているということです。
一見、あたり前のように思われるこの「プライマリー・バランス」ですが、
現在の日本の当初予算は97兆円で、
税収と税収外収入つまり本当の収入は63兆円なので、
34兆円お金が足りないわけです。
しかもこれは当初予算なので、
その後に補正予算を組むとさらに借金が増えてしまいます。
それだけでなく、いくつかの点で
2017年度予算は「粉飾決算」であると一部のマスコミで発表されました。
これは、財政学者も認めています。

たとえば、大金持ちの親に自分の会社を継ぐ息子がいるとしましょう。
この息子がどうしようもない息子で、金使いが荒くて、
毎日親の金で飲み歩いて借金もしています。
それを親が尻拭いしている、というような状況と同じです。
その子供に対して親は叱るどころか
「まあまあじゃな。だが、お前は今、月に300万円も使っているが、
それを250万円にしてくれよ」と言っているようなものです。
しかも、その月々の300万円はサラ金で借りている状況なのに、です。

私もあるデータを見て驚いたのですが、
実はギリシャは「プライマリー・バランス」の黒字化を達成しているのです。
皆さんの記憶にも新しい、数年前に国が破産して預金封鎖まで行なった、
あのギリシャでさえ達成しているのに日本は達成できない。
これは、とんでもないことです。
G20で日本のトップが「プライマリー・バランス」の黒字化を達成できませんと発表した時に
どの国からも異論が出なかったのは、
もう誰もが「日本を相手にしても仕方がない」と思っているということの現れでしょう。
それほど、日本の財政は危機的な状況です。

ご存知の通り、今わが国には国と地方自治体を合わせると1,300兆円弱の借金があります。
この金額はGDPの250%にのぼり、異常としか言いようのない状況です。
政府部内のきちんとした知見を持っている人や正確に状況を認識できる頭の良い人は皆、
「もう無理だ」という判断をしています。

10月13日の日経新聞で、慶応大学の小林慶一郎教授が次のように述べられていました。
「現世代の国民と政府が暗黙の了解で将来の情報をあまり見ないようにしている」と。
そして「財政が破綻した時にどうするかの議論を始める時期にきた」と。
国家としても国民としてもそういう時期に来ているということです。
今の日本の現状を見ると、そこまで切羽詰まった感じには見えませんね。
実際のところは、“嵐の前の静けさ”だと私は思っています。
2020年頃から金利が暴騰し、
国債が暴落して大変な時代がやって来ると私は見ています。
本当に備えるべき時期が来ました。
できれば、私が国家破産対策について書いた本をいくつか読んで頂きながら、
自分の財産は自分の責任で防衛する、
周りの雰囲気に流されずに防衛することを考えて頂きたいと思います。

浅井隆

 

嵐の前の静けさ。
先日の台風でも経験したように、
暴風雨に襲われたら
そこに立っていることさえも
難しくなります。

東京・御茶ノ水にて
(2017年10月)