時間差があるかもしれませんのでお伝えしますが、
このコラムを書いているのは、衆議院選挙公示直前の10月5日です。
今、日本では2つの大きな話題があります。
1つ目は、北朝鮮問題です。
北朝鮮はすでに日本に届くミサイルを完成させています。
そして近い将来、アメリカに届く核ミサイル「ICBM」を手に入れるという状況ですので、
トランプ大統領は本当に北朝鮮を攻撃するかもしれません。
あるいは、金正恩がそれを恐れて先に手を出すかもしれないという、
戦後私たちが経験したことないような危機が迫っている状況の中にいます。
2つ目は、もちろん衆議院選挙です。
半年前だったら「まさかこんな時期に!?」という時に、
しかも衆議院の開会の冒頭で解散するという暴挙を安倍政権が行ないました。
小池都知事が立ち上げた「希望の党」が民進党を吸収しようとした結果、
民進党が分裂し、数年前まで政権を取っていた政党が
このような形でなくなっていくことに私はびっくりしました。
世間の話題は主にこの2つですが、
経済の方はどうかというと、景気は思ったより良い状態です。
安倍政権発足前に比べれば失業率も下がり、
東京などでは若い人の人手不足で居酒屋が潰れたり
コンビニが24時間営業できなくなったりしています。
しかし、私に言わせれば、この状況は日本が根本から景気回復して
経済力を付けたためではなく、
別の要因でこのような状況になっているわけです。
それは何かと言うと、アベノミクスの根本である「異次元緩和」によるものなのです。
日銀が日本国債だけではなく、株もETFという形で買い取り、
不動産もリートという形で大量に買って資産を増やしているのです。
資産というとプラスの要素に捉えられがちですが、
日銀の資産というのは一般にいう資産とは違います。
もし将来、日本国債が暴落すれば日銀が不良債権を抱えてしまうという、
とんでもない事態を招くのです。
さらに、下手をするとそれが将来、大きな爆弾となって爆発する可能性があるのです。
国債費とは、国の借金である国債の元本償還と利払い費のことで、
今、この利払い費が低いので何とか爆弾が爆発しないで済んでいます。
しかし、今のような異次元緩和を永遠に続けるわけにはいかないのです。
いつかどこかで出口が必要です。
つまり、日銀がずっと国債を買い続けて行くわけにはいかない、
いつかは逆に売らなければいけないのです。
これを「出口戦略」と言います。
入り口と出口があって、出口をどうするのかということです。
このまま行くと、金利はいつか必ず上がります。
金利が上がることを「火事」としましょう。
劇場で映画を見ていて突然、火事が起きました。
出口から逃げなければいけない(国債を売らなければいけない)という時に、出口がないのです。
出口から逃げようと思ったら国債が暴落してパニックが起こり出口が塞がれ、
日本の財政が破綻する(劇場の中にいる人がすさまじい炎で焼け死んでしまう)というわけです。
現在、借金が1,000兆円を超えている状況で、
一時よりは借金が増えるスピードが遅くなっています。
しかし、その理由は景気が良くなったので税収が増えているからにすぎません。
その上、増収の原因がまともな経済手法ではなくて、
前述の通り日銀が国債その他を大量に買い取るという手法によるものなので、
それによって金利も下がっているわけですから、
政府の返す借金もそんなに増えていないにすぎません。
そういう中で、私は皆さんに今後長期的に生き残って頂くための
「賢者の道」についてお話をしたいのです。
日本政府は明治維新以降、近代国家になって初めて何でもありの政策を打ちました。
さらに、リーマン・ショック以降は世界中の中央銀行が手を打ち、
政府がもう一度景気を良くしようとして無茶苦茶で何でもありの政策を行なった結果、
何とか今、持ちこたえているのです。
それが日本にも波及して、日本の経済がかなり良く見えているだけだと私は見ています。
一番恐ろしい問題は、
北朝鮮の核ミサイルでもどの政党が政権を握るかでもなく、
もっと深刻な私たちに直結する問題で、
全ての野党が消費税を上げないと言ったことです。
安倍さんが言っている消費税増税を、私は正しいと考えています。
しかし、ここからが問題です。
消費税増税分の5兆~6兆円のうち、4兆円を財政再建に回す、
つまりこれ以上借金を増やさないために使うとしていたのに、
半分くらいを教育に充てると方針を変えました。
確かに教育も重要ですが、一体どれほどの効果があるのか分かりません。
日経新聞などもその点を指摘しています。
むしろ恐いのは、聞こえの良い政策を行なってバラまきをすることです。
私が皆さんに警告としてお伝えしたいのは、
今、景気が少し良い間に手を打ちなさいということです。
危機の前兆が表れる前にそれを察知して手を打っておくこと、
これが「賢者の道」であり、生き残る道であるのです。
2008年にリーマン・ショックがありましたが、
2006年に私は「浮かれる景気」(第二海援隊刊)という本を書きました(第34回コラム参照)。
今の景気は単なるバブルで、世の中は浮かれているだけなので
必ず2~3年後にとんでもないことが起こる、とその本の中で警告しました。
しかし、その時点では景気が良かったので、
誰もこの本の内容に見向きもしませんでした。
本自体も売れませんでした。
しかし、実際に2年後、あの世界を揺るがす大事件(リーマン・ショック)が起こったのです。
今の日本の財政は危機的状況で、異常と言わざるをえません。
国と地方自治体の借金を合わせたものがGDPの250%を超えました。
かつてハイパーインフレに陥ったアフリカのジンバブエの数字をも超え、
日本においては太平洋戦争末期、昭和19年の204%という数字さえも超えているのです。
しかも現在のわが国の予算は1年間に100兆円です。
税収その他で60兆円しか稼げないので、
実際には毎年40兆円ずつ借金をしています。
借金は確実に増え続けているのです。
この事実をしっかり受け止め、策を考え手を打っておくこと、これが「賢者の道」なのです。
浅井隆 |