今回は、皆さんが今一番関心をお持ちであろう北朝鮮の問題についてお話をします。
私は先日、スイスに行ってきました。
皆さんご存知の通り、スイスという国は永世中立国でどの国とも戦争をしないし、
同盟関係を結びません。
ただし、自分の国は自分の国民の力で守るという「国民皆兵」のもと、
有事の際は全員が兵隊になります。
そして驚くことに、各家庭に戦うためのライフル銃があります。
これは、義務として銃が設置されているのであり、
射撃訓練も受けることになっています。
その上、全家庭に核シェルターがあります。
核戦争だけではなく原発事故などが起こっても皆が生き残ることができるように、
観光客用のシェルターも含めて人口の120%分の核シェルターを
スイス国内に備えていると言われています。
それに対して日本は、今回の北朝鮮のミサイル問題が起こるまでは
戦争なんて遠い大昔の出来事で、
二度とあのようなことは起こらないと思っていたわけです。
実際は北朝鮮の金正恩がここ2~3年、とんでもないことをし始めています。
そこで今、私たちはどうしたらよいのかということを考えて行きたいと思います。
現在の金正恩の問題というのは、
実は彼がある妄想に駆られているということから出発していると思います。
どういうことかと言いますと、昔、リビアの独裁者と言われたカダフィ大佐は、
アメリカに盾突いて結局最後は殺されてしまいました。
アメリカがカダフィ大佐を殺すことができたのは、
カダフィ大佐が核兵器を保有していなかったからだとみられています。
ですから、金正恩は核兵器を持ってアメリカに対抗できればアメリカは手を出せない、
自分は安全だという妄想にとらわれているのです。
そのため、どんなことをしてもアメリカに届くミサイルが欲しい、
その一心で行動を起こしているわけです。
国際的な制止を無視してミサイル発射と核実験を繰り返しているこの状況を、
ある人は日本にとっての“国難”という言葉で表現しました。
私も同感です。
つまり、現在の極東アジア情勢は私たちが考える以上に危機的である、
事態は切迫しているということです。
多くの方はトランプ大統領も金正恩も戦争まではやらないと思っているかもしれませんが、
私はあり得ると思っています。
その理由は2つあって、1つは20世紀の教訓からです。
どういうことかと言いますと、20世紀は戦争の時代でしたが、
そのうちの大きな戦争が「相手の意図の読み間違い」あるいは、
まさかそんなことがという「誤算」、それが原因となって起こっているのです。
言うなれば「破滅的誤算」が導火線となって戦争に結びついたのです。
たとえば、日本がアメリカを真珠湾攻撃してしまったのも、
当時の日本政府とアメリカ政府の間に意図と対応の読み間違いがあった結果、
日本が戦争に手を出すに至ったのです。
1950年に始まった朝鮮戦争においては、
アメリカのマッカーサー陸軍元帥は中国が参戦してくるとは考えておらず、
その読み間違いによってあれだけ大変な事態に発展してしまいました。
また、かつてのソビエト連邦を率いていたスターリンも、
1941年にヒトラーがまさか自国に侵攻してくるとは思いませんでした。
さらに、ヒトラーがまだ戦争を始める前の話では、
イギリスがヒトラーの考えを読み間違えました。
ヒトラーは将来的に他国を侵略しようと考えていましたが、
イギリスは彼の思惑には気が付かず「まあまあ、わかった、わかった」と
彼の要求を適当にあしらっておけばそのうち彼の暴力的な外交は治まるだろうと考えていたのです。
つまり、その「弱腰外交」がヒトラーを図に乗らせて、
結局最後はヨーロッパ中に手を出させることとなってしまったのです。
「弱腰外交」あるいは「対話路線」に関して言えば、
もちろん対話をしなければいけませんが、
あまりにも相手が悪意を持っている場合は、
やはりこちらからもきちんとした強い意志を示さないと相手が図に乗り、もっと酷い結果を招きます。
このように、誤算が戦争を招いたことはたくさんあったのです。
それが現在、朝鮮半島に迫っているのです。
一番の問題は、トランプ大統領も金正恩も
「何をしでかすかわからない予測不可能な人間」だということです。
そのため、トランプ大統領が
「北朝鮮を叩きつぶしてやる、反撃を加えてやる」と言えば、
アメリカの国防長官と国務長官は「いやいや、対話をしましょう」というような発言をして、
どちらが本意なのかまったくわからない状況を作り出しました。
つまり、相手の本心を読み切れないという、
とても恐ろしい状況を作り上げたのです。
私は今回、北朝鮮が核実験を行なったことに対するトランプ大統領側の対応が、
ますます情勢を困難なものにしていると感じています。
先ほども申しましたが、今後は北朝鮮問題に関して何が起きても不思議ではありません。
浅井隆 |