天国と地獄
 
2016年11月7日更新

第6回 衆愚政治・哲人政治

 

4回目、5回目のコラムでは財政学者の小黒先生の話を引用させていただきました。

日本を代表する財政学者が、
この国は今のままだと破産すると断言しているわけです。
これは、やはり大変なことです。
今のままというのは、安倍政権がやっているようにバラマキを続け、
国民の歓心を買うために、
つまり、選挙に勝つために、大改革や国民にとって痛いこと、
嫌なことは一切しないということです。
ということは、衆愚政治のままでこのまま破綻まで行ってしまうということです。

 
 

シンガポールにて
(2016年10月)

 

以前も言いましたが、古代ギリシャにおいて
実は民主主義は最高の統治形態ではなかったのです。
私たちは民主主義が最高の統治形態だと思っていますが、
ギリシャではそうではありませんでした。
つまり、当時ギリシャ人は歴史に名を残す哲学者を数多く輩出したように
極めて賢明だったので、いろいろな事を予測していました。
その中で、民主主義というのは往々にして衆愚政治に陥ると考えられていました。
つまり、愚かな民衆が愚かな政治家を選んでバラマキを求め、
国家自体が最後に滅んでいくと。

では、逆に彼らが考える民主主義を超える最高の統治形態とは何だったのか。
それこそ“哲人政治”という、あまり聞き慣れない言葉に象徴される政治形態です。
これは、非常に賢くて徳もあり、
そして自分自身の欲望も抑えられて
本当に民衆のために最高の政治が出来る人間が 独裁制を敷くというものです。
変な人が独裁をやってしまうと、プーチンやヒトラーのようになってしまいますが、
そうではなく神に近い人間が独裁政治を実行する。
ただし、それがなかなか難しいので、仕方なく民主主義をやっていると。
これが、ギリシャの本当の姿だったのです。

というわけで、私たちは現代においてアメリカを中心に
民主主義は世界一だと思ってやっておりますが、
残念ながら日本国においてはやはり衆愚政治に陥ってしまったなと。
特に安倍政権はそうだなと思います。

先日、ある人から聞いた話ですが、
その人のお母さんが65歳以上から3万円もらえるという
「年金生活者等支援臨時福祉給付金」で電気毛布を購入したそうです。
「いやぁ、安倍さんからお金をもらいました。ありがたい」
といっているようなのですが、これは話が違う。
安倍さんがくれたわけではないのです。
これは、自分たちの税金なのです。
あるいは将来世代の負担。
つまり甘い妖言、人を騙しているようなものです。
確かにお金を貰えればその時はお年寄りは喜ぶけれど、
結局、これは子孫の負担になってくるのです。
しかも、GDP比で250%というとんでもない規模の借金をしているのです。
ですから、やはりこの国はどこかおかしくなってしまった。

そんな中で、この間の小黒先生のお話をお読みいただいて、
皆さんはどう思われたでしょうか。
小黒先生は今の政治のままだと無理だ、
安倍政権だけでなく自民党もかつての民主党もだと仰っていました。
民主党が一時政権を取った際、
あの時も例えば群馬の八ッ場ダムの工事は一旦中止という事になりましたが、
結局、最後はやるという事になりました。
これは元々自民党が悪いのですが、
この工事は付帯工事も加えると1兆円近い費用がかかっているのです。
世界のどこか小さな国ですと、これは国家予算になるようなお金で、
それをたった1つのダムの為に使っているのです。
確かに今年、東京は台風が来るまで水不足と言われていました。
ですから、ダムがもう一つあってもいいのかもしれません。
しかし、何十年に一度、不便をすることはしょうがないことです。
それを水の為と言って1兆円かけて、
普段ほとんど使わないダムを作ること自体に問題があると思っています。

それに対して、なぜ私がいつもニュージーランドをおすすめしているかと言いますと、
それは不動産が素晴らしい、
景色が美しいというだけではないのです。
実は、ニュージーランドという国は政治が非常にクリーンな国なのです。
政治家と官僚がクリーンで、汚職が世界でもほとんどない国だといわれています。
そこも、私がニュージーランドを買っている点なのです。
ですからお金の無駄遣いは全くない国です。
日本と同じように山が多いのに不便をものともせず、トンネルを作らせません。
大したものです。

それに比べて日本の政治家、官僚は、腐っているとまでは言いませんが
国民に媚びを売り、裏で何をやっているかわからない、
そういう実態があるのではないかと見ています。
ですから、このような無駄遣いを続け、
あるいは今でも公共事業としてリニアモーターカーを作り、
新幹線を札幌まで延ばし、 長崎新幹線も作る。
さらに、この間国会中継を観ていたら自民党の議員が安倍首相に向かって
「もっと新幹線を作れ、今の北陸新幹線を延長して
最後は関空を通り、橋を作り、四国まで延ばし、
さらには山陰新幹線も作れ」と言っていました。

現在、財政がひっ迫し、将来どうなるかわからない状況で
この発言はいくらなんでもおかしいのではないかと思うのですが、
それをさらに「やれ!」といっているのです。
これを聞いて、私はついに日本は借金も増えましたが、それ以前に
日本人自体が国家や政治に甘えてバラマキを求める国民になってしまった、
自助努力で自分が稼いで国家のために国を潤すという
国民ではなくなってしまったのだなという感じがしました。

というわけで、7回目はさらにこの続きの話をしたいと思います。

浅井隆