天国と地獄
 

2020年9月25日更新

第142回 コロナ不況の現実とインフレの予兆

 

皆さんこんにちは、浅井隆です。
今回は、猛威を振るう新型コロナウイルスの影響についてお話しましょう。
具体的に私が実際にこの目で見た「街角景気」、そして長期的に見たこの国の行く末について
お話したいと思います。

先日発表された4-6月期のGDPは、衝撃的でした。
年率換算で28.1%減と戦後最悪の落ち込みとなりました。
日本だけではなく、欧米各国も軒並み数十%の減少幅となり、
あらためてコロナ不況の深刻さが窺えます。
ただ、このような経済指標やデータとは別に、
一般の人たちの生活への影響については、報道されていない部分が少なくありません。

まずは、日本有数の観光地、京都です。
コロナ前は世界中から大勢の外国人観光客が訪れ、
宿泊、飲食、買い物、観光などの消費が拡大しました。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、
世界的に渡航制限が実施されたことで、インバウンド消費はほぼ消滅しました。
日本人観光客についても、不要不急の外出自粛が奨励された影響で旅行が手控えられ、
京都を訪れる旅行者は激減しました。

私は先月(2020年8月末)実際に京都を訪れ、嵐山まで足を延ばしてみました。
嵐山には「渡月橋」という有名な橋があります。
普段は観光客でごった返すこの橋も、ほとんど人がいません。
橋の向こうの商店街に多少、人がいる程度です。
愛宕神社へと続く愛宕街道という昔の街道も人気があり、いつも混雑しているのですが、
日曜日の昼過ぎに訪れるとひとっ子一人いません。
乗ったタクシーの運転手さんも久しぶりに嵐山に来たようで、
「えっ!(人が)いませんね……」と絶句していました。

普段は狭い道に人があふれているため、車で通る場合、
時速3~5キロ程度の低速でゆっくり通らなければなりません。
それがその日は、全く人がいないためスイスイ走れるのです。
シャッターが閉まったままの店や、「FOR SALE」の貼り紙がある店もありました。
愛宕街道には、「平野屋」という鮎で有名な茶屋があります。
江戸時代そのままの古い佇まいで雰囲気のある素敵なお店なのですが、
ここもまたお客が全くいません。
お土産用の鮎の甘露煮が売られていて、2尾で2000円と少し高かったのですが、
二つ購入するとお店の人はとても喜んでくれました。

続いて、北海道です。札幌と小樽を訪れたのですが、札幌は閑散としていました。
土曜日の夜に寿司屋に行き、その帰りに乗ったタクシーの運転手さんが非常に面白い人で、
札幌の駅の真ん前に着くなり、こう言うのです。
「お客さん、見て下さい! 土曜日の夜なのに人がいないんですよ!」
混み合うはずの週末の夜にもかかわらず、駅前に人がいないのです。
その運転手さんは、若い時に転勤などで日本全国を回っていたとのことで、
話をしていると、頭も良いし、情報収集能力の高さが窺える方でした。
この運転手さんに当たったことは私にとってラッキーでした。
彼はいろいろなことを教えてくれました。
なんと、北海道最大の歓楽街・すすきのでは、すでに800店が潰れたそうです。
表通りの店も半分は閉めており、賑わうはずの夜に行っても人はほとんどいないそうです。
店を開いていても、売上は半分以下というところも多くあると。
タクシー会社も感染防止のため、すすきのにはなるべく行かないよう
ドライバーに指導しているそうです。
さらに市内のホテルも、有名ホテルでさえまだ営業が再開できずにいるところが
いくつもあるということでした。
その運転手さんの収入は、去年に比べて4分の1に減ってしまったそうです。
すでに年金をもらっており、タクシーの収入はお小遣い程度ということなので
なんとかやっていけているようですが、
収入が4分の1になってしまったら普通は食べていけないですよね。

小樽へは札幌から向かいましたが、列車はガラガラで、ほとんど人が乗っていませんでした。
小樽には「堺町通り」という有名な商店街があります。
ガラス細工の店やステンドグラスの美術館、新鮮な魚介を売る店、ケーキ店など、
長さ1kmほどの通りにいろいろな店が立ち並ぶ、小樽有数の観光スポットです。
ここにもほとんど人がいません。
私は「ルタオ」という有名なケーキ店に入ってみました。
多少は若いお客さんがいてほっとしたものの、
帰りにエレベーターに乗りこんだ時、私は驚きました。
「何だ、これは!?」そこには衝撃的なポスターが貼ってありました。
「お願いします。助けて下さい。小樽堺町通り商店街」と書いてあるのです。
この、「懇願ポスター」には絶句です。
地方の観光地や商店街の厳しい状況がよくわかります。
今後、多くの店が潰れてなくなっていくのは避けられないでしょう。

雨のせいもあってか、
普段なら観光客でにぎわう
堺町通り商店街には、
正午にもかかわらず
ほとんど人がいなかった。

先日テレビで見たのですが、老舗の三味線工房が廃業するというニュースが放送されていました。
音楽関係の商売は壊滅的な打撃を受けています。
ライブ活動が極端に制限されているわけですから無理もありません。
三味線工房もその影響を強く受け、注文がほとんどなくなってしまったそうです。
前年の4月にはびっしりあった注文がほぼゼロになり、廃業せざるを得なくなったというのです。

というわけで、大企業や一部のIT企業はまだ良いですが、
中小、特に地方の観光に依存しているようなところは壊滅的打撃を受けています。
ただ、このように酷い経済状況にもかかわらず、不思議なことに株価は回復しました。
これはご存じの通り、政府が経済を下支えするためにお金をばら撒いているからです。
日銀を含め、世界の中央銀行が金利を下げ、大量の国債を買い、お金をばら撒いているのです。
株だけでなく、金(ゴールド)も1グラム7,000円を超え史上最高値を記録しました。

株価や金価格の異常な上昇は、インフレの前兆です。
私は将来、「巨大インフレ」がやってくると考えています。
大幅なインフレになれば金利が上がり、国債も暴落します。
その結果、GDPの2倍を超える巨額の借金を抱えた日本国は恐らく破産するでしょう。
つまり、国家破産です。ハイパーインフレ、大増税、そして最後には徳政令に見舞われます。
徳政令というのは、たとえば銀行預金を封鎖して、現行の円(旧円)を無効にして新円に切り替え、
国民全員のお金を銀行に預金させ、そこに財産税をかけるのです。
日本では、敗戦直後の昭和21年に行われました。
この時の財産税の最高税率は、何と90%です。高額の資産を保有する人は、
財産に90%の税金が課せられたのです。
このような徳政令をやらざるを得ない状況が、2026年以降に到来する可能性が出てくると見ています。

ですから、皆さんには本当に気を付けていただきたいのです。
近々、拙著『巨大インフレと国家破産』(第二海援隊刊)という本を
出版しますので、ぜひお読みください。
やはり、このような危機の時代には、一人で生き残るのは困難です。
正しい情報を得て、専門家の助言を得ながら行動することが生き残りの鍵となります。
情報収集の第一歩としてお勧めするのが、
私が監修・発行している『経済トレンドレポート』です。
実は昨年7月10日号の『経済トレンドレポート』で恐慌警報の第1弾を発令し、
それ以来、恐慌発生への警報を出し続けています。
今年の2月20日号では、「やはり、2020年はとんでもない年になる!?」と、
今年の恐慌発生を事前に予測しました。

『経済トレンドレポート』を読んでいれば、少なくとも経済の大きな流れはつかめると思います。
その上で、会員制クラブに入会し、専門家の助言を受けながら
具体的な資産保全・資産運用に取り組まれるとよいでしょう。
私が主宰する会員制クラブとしては、
「プラチナクラブ」「ロイヤル資産クラブ」「自分年金クラブ」等があります。
それらのクラブの情報をご活用いただき、これから来る大変動の時代もご自身の資産を守り、
ご自身の生活を守っていただきたいと思います。

小樽堺町通り商店街のポスター。
「お願いします 助けてください」とあるが、
なんとか明るく盛り立てようと
精一杯の様子が伝わってくる。
これが多くの地方経済の現実だろう。

       (2020年9月 小樽にて)