天国と地獄
 

2018年8月6日更新

第65回 イギリスも異常気象 

 
皆さんこんにちは、浅井隆です。
今、私はイギリスに来ています。
毎年イギリスにはこの季節に来ているのですが、今年は天候があまり良くなかったようです。
特に冬は雪がたくさん降ったため、3日間も車が出せなかったこともあったそうです。
イギリスは寒い国なのですが、通常は日本の北陸や東北、北海道のように
雪がたくさん積もるということはほとんどありません。
ですから、このような大雪は数十年ぶりのことだということで、
イギリスも異常気象に見舞われているようでした。

小麦畑を見てもとても生育が悪く、
普段だったら小麦の苗もかなり育って
青々とした小麦畑が広がっている時期なのに、
見るからに畑に元気がない状態でした。
これも天候が良くなかった影響だと思います。
さらに、例年ですと6月は
バラの花が綺麗に咲いていて、
天気も良くて暑いくらいなのですが、
今年はかなり涼しかったです。
イギリスの郊外にも滞在したのですが、
日中でも気温が22℃くらいまでしか上がらず、
朝晩は10℃を下回る日もありました。
6月の東京の気温と比べたら、
本当に肌寒いような天候でした。
イギリスの6月、7月というのは
1年で最も気候が良い季節なのですが、
その季節がこんな状況では
農作物への影響も心配になります。

 

 

例年より発育の悪い小麦畑。

イギリスという国の緯度を知っていますか?
イギリスの南端が日本ではどの辺りだとお思いでしょうか?
大抵の人は仙台とか札幌くらい?
などと言うのですが、実はそれよりもさらに北です。
今はロシア領になっている、
サハリンのちょうど真ん中くらいです。
びっくりするほど北の方にあたるのです。
ですから、緯度から考えると
本当はもっと寒くてもいいくらいのところなのです。
ではなぜ、イギリスをはじめ北欧のノルウェーでは
冬でも凍らないのでしょうか?
たとえば、サハリンのもっと南で北海道の東北部分、
網走の辺りは流氷が来ますよね。
それで1月、2月は完璧に凍ってしまうのですが、
イギリスではそのようなことは絶対にありません。
これは、「メキシコ湾流」という暖流が
メキシコ湾から暖かい海水を運んで来て、
イギリスの沖合を通って
最後はノルウェーの沖合まで流れているためです。
この暖流のお陰でイギリスは緯度が高い割に暖かい、
というわけなのです。

 

 

美しいバラの花を育てている家が多い。

そして、日本とイギリスを比べた時に大きく違う点があります。
それは、日本の国土はイギリスよりも広いのですが、日本には高い山が多いということです。
富士山からはじまって南アルプス、北アルプス、東北地方にも山脈がありますし、
四国には四国山脈があり、中国地方には高度が低いので山脈とは言いませんが
中国山地と呼ばれる山々があります。
九州も含めて、本当に日本には山が多いということがわかると思います。
実に、日本の国土の約8割を山と森林が占めているのです。
それに対して、イギリスの国土のほとんどは平坦です。
雪の積もるような高い山もありません。
たとえば、ロンドンから西に車で2時間ほど行ったところに
「コッツウォルズ」という大変風光明媚な地域があります。
そこは産業革命の時にたまたま取り残されてしまい、
300年くらい前の古い家や風景がそのまま残っている場所です。
今ではロンドンに住む人たちの定年退職後のあこがれの住み処となっており、
成功した人が老後ロンドンを離れて別荘や家を買ってのんびり暮らすという場所になっています。
そのコッツウォルズなどでは、本当にゆったりとしたなだらかな起伏が延々と続いています。
このようにイギリスという国は、日本より国土が狭いけれども
車で1時間も走ればそこは見渡す限りの大平原なのです。

イギリスには山が少なく、
平坦な土地が広がっている。

(イギリスにて  2018年6月)

 


農業においても日本とイギリスではまったく違います。
米と小麦という違いもありますが、
日本の場合は一戸あたりの農家が持っている耕作面積が小さいので
小型のトラクターで作業をするのが普通ですが、
イギリスでは一戸あたりの耕作面積がとてつもなく広いので、
日本では見たことのないような巨大なトラクターを使います。
特に秋の収穫期になると、
その大きなトラクターが他の車を押しつぶしそうになりながら道路を走っています。
イギリスは、日本より狭い国土なのにとても広々と見える、そういう国です。